出版物

現代俳句の展開

句集『ぴあにしも』 現代俳句の展開 第3期・5

川村研治 著

(頒価2,000円 2017年6月刊)
 
人と人との心のやりとりは、弱いことこそ
強さなのだとあらためて思うようになっている。
自分の言いたいことを叫んだり、
考えを押し付けるのではなく、
読者の懐にしずかに入りこんでゆく、といったことを
これからも考えていきたいと思っている。 あとがきより
 
海原に雨しみてゆく海月かな
水打つて打つて時間をふやすなり
嘴の根元にまなこ冬の鷺
秋晴れの底辺×高さかな
揚雲雀ふつと消えたりしてあそぶ
海上に満月のある電話かな
やさしさはやや暗きもの枇杷の花
箱庭にだんだん入つてゆくやうな
ピアノピアニッシモ猫の子が眠る
道にはみだす落椿を叱る
             自選十句
句集『丸太小屋(ログハウス)』 現代俳句の展開 第3期・4

樋上照男 著

(頒価1,500円 2017年4月刊)
俳句を詠むことで科学の目指すものへの科学者の
良心の歯止めをしっかりつけようとしている。
(中略)パフォーマンス自在な樋上照男の存在は、
「岳」俳句会ばかりでなく、日本の自然科学者俳人の
明朗闊達な良心として貴重である。
              ―宮坂静生「序」より

黒南風や貝殻溜まる磯の隙
月の夜荒野に眠る土耳古石
海鞘喰うて杜の都に雨の降る
帯解けばざらと素麺零れけり
結晶の育つ二月の試験管
森揺れて囀りは早口言葉
狼になり損ねたる月夜かな
月影や淀の湾処に琵琶鱮
発条の捩子巻き戻す原爆忌
桔梗咲き何か覚悟のやうなもの
             自選十句
句集『青』 現代俳句の展開 第3期・3

杉本青三郎 著

(頒価1,500円 2017年3月刊)
 
当たり前の世界の中で、
それぞれが
個性を持って光り輝く。
青は青らしく
光り輝けばよい、
という覚悟がそのまま
自由な地平線への
出発となる。
句集『青』の世界に
遠浅の青色青光を
感じるのは
ぼくだけではあるまい。
       (前田  弘)
 
誰もいないのが正しい枯野原
箱庭の中で迷子になっている
寒林という太古の海の匂い
ぶらんこの停止真昼がぶらさがる
えごの花川は流れて音となる
蜥蜴の尾濡れた真昼が残される
近づいて金魚を話しやすくする
白さるすべり天空に水辺あり
晴れ渡りすぎ紫陽花の肉離れ
雲の上のバナナはるかなる戦場
             自選十句
遺句集『花まつり』 現代俳句の展開 第2期・10

城 寿子 著

(頒価2,000円 2017年3月刊)
ドキュメンタリーあり
ネオリアリズムあり
周到さの中に、余裕と
豊かさを感じさせる
城寿子独自の世界がここにある。
         ──中村和弘

竹とんぼふはりと届く花見の座
夕日染む幾何学模様牡蠣筏
空撓め昇りゆく飛機青田波
台風過漁火は海かがる糸
晴天の雀を零す雪間あり
山の子の分厚い服や入学す
十薬の土手に風撒く山手線
爆音下泥落花生黒く積む
沈金のやうな一湾鳥帰る
来迎会この世に渇きラムネ飲む
句集『針突(はじち)』 現代俳句の展開 第2期・9

大城あつこ 著

(定価:私家版 2016年10月刊)
ひまわりの芯の昏さに突き当たる
あのひまわりの中にゴッホの狂気や苦悩を
見ていたのかも知れない
    (岸本マチ子「序にかえて」より)

あっけらかんと少女の素肌夏に入る
恍惚の母の寝息にちちろ棲み
風ながれ鬼になりたい芒原
ひまわりの芯の昏さに突きあたる
左心房透きとおるまで芹なずな
火種いま沸点の島蝉しぐれ
繕っても朧ぼろぼろするばかり
如月のところどころは萌黄色
生き方を自ら決めた蛍の夜
六月の蛇口開ければ生きる音
             自選十句
句集『蟬氷』 現代俳句の展開 第2期・8

春田千歳 著

(定価2,000円(税込)2016年11月刊)

ラ・フランス絶対転ばない自信

卓上に無造作に置かれたラ・フランス。みてくれは悪いが味は上品でうまい。不細工な不正円だが絶対に転ばない。ラ・フランスの客観写生のようだが、加齢を意識した作者の自画像かも…。否、ほんとうは俳句の正統を希求しながら異端に遊び、しかし、絶対に転ばない、という作者の進むべき俳句の姿を暗示しているのだ。        ・・・前田 

 

初蟬に木の震へをり祈りをり

鬼房よ橅一本は寂しいか

ぶよぶよと正義の形アメフラシ

牛蛙牛を喰ひたるやうな声

蛇泳ぐ油のやうに死のやうに

睡蓮の咲くまで橋の眠りをり

月冴えて永田洋子を処理できぬ

謎々のはじめは少女兎跳ぶ

3・11仕舞ひ忘れし雛の眼よ

鰭あれば死者とふれ合ふ青水無月

             自選十句

句集『水陽炎』 現代俳句の展開 第3期・2

長井寛 著

(定価1,500円(税込) 2016年10月刊)
朝ぼらけ東の空が茄子紺に映える。
朝焼けを煮詰めてゆくと小昼の底に素心だけが残る。
 俳句は旅人の素心より生まれる。
真っさらなそんな俳句を詠みたいと思う。 長井寛
一羽づつ曇天になるゆりかもめ
ひらがなの雪降る声を聴きにけり
かなかなの啼き出す刻を禅という
おもいぐさこんなところに神獣鏡
昼と夜の重なってゆく白木槿
人なべて途中下車せり葛の花
遊星になりそこなってしゃぼん玉
昼月の落つ地平線水母浮く
星祭り遠くに居るという長姉
白骨の母とふたりの十三夜
             自選十句
句集『砂川』 現代俳句の展開 第3期・1

西村智治 著

(定価1,500円(税込) 2016年10月刊)
 
12匹の猫と暮らしてきて、皆見送ってきた。
猫と生きてきた、というより、
それが生きるということだったのだろう。
その猫たちと妻にこの句集をささげたい。
           ――著者

​      岡田一夫選十句
砂川は物陰多き花臭木
長葱のなか薄明のごときもの
合歓咲くや冥土に二匹猫送り
寒鮠の佳味に齢の届きけり
くろがねの足踏みミシン栃木の夏
外套にてルオーの青の前に立ち
清明に遠方というところあり
ムスカリや夜は星々も走るなり
青鬼灯の苦みに性のごときもの
雨水後の五日を何もせで過ごす
句集『宿題』 現代俳句の展開 第2期・7

足立喜美子 著

(定価2,000円(税込) 2016年9月刊)
 

本句集の核心は、作者特有の「笑い」の世界である。

読者は作者の笑いの魔法に操られてゆくだろう。

笑いの種類も変化球投手のように多彩だ。

         佐怒賀正美(「序に代えて」より)

 

栗剝くや丹波に生まれ離れても

雲の峰彼の世この世の鬼の貌

われからの声か土偶のこゑか暑し

紫式部へ手毬ころげてゆきさうな

狐火や母の死風化するばかり

花野まで来て宿題があるといふ

空蟬をのせて新聞さざなみす

ドーバー海峡夢見て水着試着かな

ぽつぺんを吹いて他人のやうな音

風来て風がはづかしげなり冬桜

             自選十句

句集『青い絵タイル(アズレージョ)』 現代俳句の展開 第2期・6

斉藤すみれ

(定価2,000円(税込) 2016年9月刊)
 

爽やかな女性である。「爽やかさ」は生来の

ものもあろうが、長い人生さまざまな哀楽

を経て、つとめて身につけるものでもある。

(中略)句集「青い絵タイル」は歩けば長い

人生の出発に相応しい宝物である。

                                   宮坂静生(「序」より)

 

デジャ・ビュは蟇鳴く沼原(ぬまつばら)

どんどの炎猛りて海へ海へかな

赤とんぼ宙に数多の基地もてり

露の世を星仰ぎつつ生きたしよ

沖波に暾(ひ)のあたりたる紫羅欄花(あらせいとう)

身を揺すり夜は獣となる桜

水を押す水のかたまり鳥渡る

煌めきを集めてゐたる浮巣かな

サン・ベント駅の涼しきアズレージョ

燃ゆる目よ秋の蛇飛び込む刹那

             自選十句

句集『武骨』 現代俳句の展開 第2期・5

小笠原至 著

(定価2,000円(税込) 2016年6月刊)
 
この句集は作者の反骨心、自嘲、滑稽、含羞、
矜恃、時折のペダンチズム、そして韜晦、
それらが「武骨」の裏打ちの上に
バランスを取りながら輪舞を見せている。
     ――佐怒賀正美(「序に代えて」より)
 
北上川の無骨な冬を邀へけり
津波幻聴暁闇邃く鳥渡る
シーソーに杜甫と李白や天高し
 
句集『面白き人生』 現代俳句の展開 第2期・4

長尾信子 著

(頒価1,500円 2016年5月刊)
 

「犀」誌上の作品を具に見てゆき、

その中から秀句を拾い上げると、

なんとも見事なその晩年の景が

表れてきたのに驚く。

    (桑原三郎「序文」より)

  銀河系の暗黒物質ところてん

  眦にクレオパトラライン夏の猫

  初弥撒や一番好きな帯締めて

句集『五彩』 現代俳句の展開 第2期・3

山﨑百花 著

(2,000円(税込) 2016年4月刊)
 

第二芸術やそれ以下の現実にたっぷりと根を張り、

そこから豊かな養分を吸い上げて、時々第一芸術の

花を咲かせる道もある。(中略)そうやって思いを深化

させ、その深化を俳句の言葉として持ち帰った時、

俳句は文学になる。       (「序」より)

 

  ジョバンニの切符身に入む色として

  恐山にわたしの地獄おいてきた

  一灯へ集まる雪の五彩かな

句集『零』 現代俳句の展開 第2期・2

神山宏 著

(定価2,000円(税込) 2016年4月刊)
神山宏は、まことに多様である。
自然、風景を人間臭く把握する心は
変わっていないが、
その表出は様々である。(中村和弘)
鳩と化す鷹は唯今織の中
寒雷やきょとんと一升瓶のあり
春鴉鉄の匂いのする空地
句集『雪解瀧』 現代俳句の展開・10

齋藤雅美 著

(定価1,500円(税込) 2015年9月刊)
 
北辺の地を意識した厳しく雄大な山河に真向かう作者は、
一方でふだんはウィット豊かで現代に心をひらいた生き方を
見せているのであろう。 ―「序に代えて」(佐怒賀正美)より―
 
あかつきの地平をわたる雪微塵
海霧来れば死木が叫ぶ風岬
狐ゆく氷湖さへぎるものもなし
たてがみに氷からませ放ち馬
修羅に果つシャクシャインも狼も
気だるさや羽ぬけ駝鳥の大目玉
サイドカー速し残暑が追ひかける
句集『漂泊』 現代俳句の展開 第2期・1

細根 栞 著

(定価2,000円(税込) 2015年8月刊)
 
鳥渡るころか埴輪の泣くころか
 
ここには生来の「端正」さに加え
表現における「真実」の「実」との
かなり高度な合体がある。
     塩野谷 仁(序に代えてより)
 
叙事詩あり春夕焼の丘があり
寂光の花は風なり風は花
蛍袋から青僧がぞろぞろ
漂泊の風は旅人青山河
空(くう)という重さ泰山木の花
白日の青葉木菟なら逢いにいく
美しき罠ひとむらの曼珠沙華
補陀落の一景として露の玉
鳥渡るころか埴輪の泣くころか
北天の星よ鎮守の梟よ
             自選十句
句集『子午線』 現代俳句の展開・9

月村青衣 著

(定価1,500円(税込)2014年12月刊)
 
 

平成18年から平成26年までの372句を収めた第一句集。

 
 

子午線はこの辺と剥く青林檎

狐火を描いて私の地図になる

 

この句集には通り一遍の「抒情」ではなく、生きざまが為せる「叙情」がある。作者はいまも多病との闘いの最中にあるが、いま以上に我が身を愛おしんで、次なる句集に向けて確実な歩みを続けられることを願いたい。(「寡黙なる叙情 序に代えて」より  塩野谷 仁)

句集『夢幻流転』 現代俳句の展開・8

小橋啓生 著

(定価1,500円(税込) 2014年9月刊)
 
何よりも、
あの目映き火焔式土器のゴシック様式を、
彼の俳句が覚えず内包している所が凄い。
     ―岸本マチ子「序にかえて」より―
 
初日影一瞬のわれ流転の丑
月光の結晶のような沈思かな
獏獏と夏の夢食うキリンの首
蝶飛んで夢幻光年妊れり
雨粒は白いほうたる激戦地
東日本傾いて咲く桜さくら
母刀自はほたるぶくろの湖音す
団扇より未帰還兵へ風の息
空椅子に白い八月ぽつんと居る
寒夕焼大き火種の女燃え
             自選十句
句集『緩和時間』 現代俳句の展開・7

越野雄治 著

(定価1,500円(税込) 2014年8月刊)
 
第一句集といえば、それらしい表情が見えるものだが、
この句集にはそれがなく、経歴の長いベテラン作家
の作品集のように読める。それぞれの作品は、ためら
うことも気負うこともなく、自分の方法と自分の言葉で
的確に対象を把握している。     ――長峰竹芳
 
 
天平の 微熱ほのかに袋角
黙禱は何も祈らず沈丁花
辣韮をカレーは嫌ひかもしれず
        ――自選3句
句集『花暦』 現代俳句の展開・6

西原三春 著

(定価1,500円(税込) 2014年1月刊)
 
西原三春さんの俳句に会ってもう四十余年になる。今も昔と同じように思うことは、日常の暮らしの身辺にこんなにも多くの心を和ませるものやことがあったのだということだ。それらが、平明なことばで三春さんの表情をもった句になってゆく。        (宇多喜代子)
 
師の在せばやはりコーヒー春の雪
はぐれ鴨流行色は黒なるよ
白南風や螺子ほどけゆくオルゴール
無口なる人に嚙まるる海鼠かな
母の骨吾を三月に産みくれし
小雨にて終らせたまふ今世紀
据ゑ石は中まで石か星月夜
蚊帳吊草長い昭和のありまして
鳥渡る一直線のこころもて
灯る街柚子湯に入る日なりけり
句集『一里塚』 現代俳句の展開・5

並河洋 著

(定価1,500円 2013年8月刊)
米壽を迎えるにあたり俳句人生の証しとしての句集を残したく
第二句集を刊行することとした。
私の人生には六つの大きな転機があった。
あと残るのは一つの転機である。
 
片蔭や死とは安堵の一里塚
 
消えるまで幸せだったシャボン玉
仮の世の締めは散骨パセリほど
秋の海パレットにスパイスを少し
句集『氷点下』 現代俳句の展開・4

斉藤道廣 著

(定価:本体1,500円+税 2013年8月刊)
 
月日に季節が立ち
その季節もやがて遠く過ぎ去る

          季節は一会の愛であり

           俳句は慈悲である

 
出会いの句を集めてみました

偶然をしたためる

季語の力をかりました

 
肋骨(あばらぼね)五本切り取る氷点下(ひょうてんか)
葬(ほうむ)るに手に何もなし凍土(ツンドラ)や
花鯎(はなうぐい)妻が単身赴任(ふにん)せり

句集『桜鯛』 現代俳句の展開・3

松本道宏 著

(定価:本体1,800円+税 2013年5月刊)
 
文豪のごとき瞳の桜鯛 松本道宏
文豪によせる尊敬の念、文芸によせる作者の情(こころ)がずばりと表現されている、と同時に桜鯛もまことに貴重なものに見えてくる。発表当時、群を抜いて評価の高かった句で作者にとって記念すべき一句である。       (中村和弘「跋」より)
 
 文豪のごとき瞳の桜鯛
野遊びや馬を跳び越え馬となる
新涼の馬よりもらふ輻射熱
マラソンは聖者のあへぎ柚子匂ふ
仔馬立ち母より低き世界見る
福助の福耳重し黄落期
図書館の午後を曇らす黄砂かな
一閃の新幹線や田水沸く
訪ふ度に違ふ悲しみ沖縄忌
肉体を抜け出す思考冬至風呂

句集『塵芥句菟抄』 現代俳句の展開・2

太秦女良夫 著

(1,500円 2013年5月刊)

『塵埃句蒐抄』は世に出ることのない  

未発表句の言霊を供養する塔墓に代わる。

『祝意応谺』は二百冊以上の贈呈句集に対する

祝句の中から六十句を選び諸覧の目に曝すことにした。


 

ファーブルの蟻を跨いでふりむくな

音すべて吸い込み雪の嵩増しぬ

啤酒で一気の乾杯しておでん

句集『雪解川』 現代俳句の展開 第3期・6

松本詩葉子・著

(頒価2,000円 2017年8月刊)

作者の作風の基本はオーソドックスな写生である。

まずは地元金沢の風土を見つめ直し、俳句で詠もうとする。

美しい風景もあれば、厳しい風景もある。

                               ――佐怒賀正美(「序に代えて」より)

 

いくたびも燈台を消す冬の濤

野火追ふはかつて狼たりし風

土の香の立ち上がるまで雪を搔く

津波禍のたましひ海市へと避難

百日紅赤子いきなり歩き出す

崖下の水辺を征す鷹の餓ゑ

白山の尾となり撓ふ雪解川

草迷宮月のうさぎも紛れ込む

八束碑を仰げば昼の銀河見ゆ

流さるる鳰の迅さよ雪解川

             自選十句

 

 
句集『蝶のみち』 現代俳句の展開・1

岡崎淳子 著

(定価1,500円(税込) 2013年4月刊)


 
〈晩年の右手に弾む手毬歌〉
のような生涯の一冊――。 
しかし、俳句はここからの思いも亦真実。

落日の加速ガラスのエレベーター
かの世からはらり初蝶ひらりと子