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『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』おかげさまで完売致しました。

青年部 (2019年3月12日掲載)
『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか
『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』送料込2,500円
現代俳句協会青年部編
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ふらんす堂から4月に重版されます。
お近くの書店か、直接版元にご注文下さい
 
この輝かしい俳句の流れは、途絶えてしまったのだろうか。そうではない。地下水脈となって浸透したのだ。
新興俳句とは何であったかを、広角的にアプローチし検証することが目的である。担い手は新興俳句がそうであったように、二、三十代の若者が中心となった。本書には俳句の未来をさぐる手がかりが無尽蔵であると信ずる。
現代俳句協会副会長・高野ムツオ
 
<収録作家・44人>
安住あつし/阿部青鞋/石田波郷/石橋辰之助/井上白文地/片山桃史/桂 信子/加藤楸邨/神生彩史/喜多青子/栗林一石路/高 篤三/齋藤 玄/西東三鬼/佐藤鬼房/篠原鳳作/芝不器男/嶋田青峰/杉村聖林子/鈴木六林男/高屋窓秋/竹下しづの女/富澤赤黄男/永田耕衣/中村三山/仁智栄坊/波止影夫/橋本多佳子/橋本夢道/東 京三/東 鷹女/日野草城/平畑静塔/藤木清子/古家榧夫/細谷源二/堀内 薫/水原秋櫻子/三谷 昭/三橋敏雄/山口誓子/横山白虹/吉岡禅寺洞/渡邊白泉
  
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『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』今だからこそ新興俳句を読む
中村 和弘
 
 今年は、年号が変り新しい時代を迎えようとしている。俳句史にとっても激動の時代であった昭和、特にその戦中戦後もさらに遠くなり歴史の彼方ともなろう。当協会では、六十周年記念事業として『昭和俳句作品年表』(戦前・戦中篇)、七十周年記念として同(戦後篇)を既刊しているが各れも昭和俳句の最も激動の時代の俳句作品の秀れたものを編年体で収集した。
 それに加えて七十周年事業として『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(現代俳句協会青年部編)が一月に刊行の予定である。昭和初期に綺羅星のごとく時代を駆け抜けた新興俳句の作家達、現代俳句の源流をなす運動の全貌を概観する、がこの本のコンセプトである。
 そもそも新興俳句とは何であったのか。
 <俳句用語。昭和六年から同十五年までの約十年間にわたり、反伝統・反「ホトトギス」を旗印に近代的革新をめざした俳句運動。運動は近代的抒情や斬新な感覚の発揚による表現様式の革新と、俳句形式による思想性や社会性の表出をめざして青年層を中心に展開された。>と『俳文学大辞典』で川名大がわかりやすく説明している。そのきっかけは水原秋櫻子の「自然の真と文芸上の真」という論文を「馬酔木」誌上に発表したことによる。
 川名大は新興俳句を更に詳しく三期に分けて説明している。新興俳句について最も説得力のある分類であろう。ただその作家となると人によって意見も異なり微妙なところである。が、俳句の可能性を大きく拓き現代俳句の源流を成していることは間違いない。
 この『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』の特徴は、新興俳句の中心で活躍した俳人のみならず、その俳人に師事し影響を受けた俳人を含めてより広く取り上げていることである。ちなみに水原秋櫻子、山口誓子、富沢赤黄男、西東三鬼、嶋田青峰、渡邊白泉、篠原鳳作、井上白文地、東京三(秋元不死男)等の中心を成す俳人から安住敦、桂信子、佐藤鬼房、加藤楸邨、石田波郷等も含めて四十四名に達する。解説も若い俳人、評論家、今日的視点でどの様に観ているか興味深い。戦中、戦後の時代、他ジャンル例えば短歌、現代詩等との垣根は無かったのではないか。集中のコラムとして「映画と新興俳句」「現代詩と新興俳句」等があり、あまり今までに無かった視点であろう。
 私も三十歳代に「アヴァンギャルドとドキュメンタリー」と言うテーマで俳句評論を書いた事があった。戦後アメリカ映画のみならずヨーロッパ映画等が怒濤の如く日本に輸入され、特にイタリアで興ったネオリアリズムやヌーベルバーグの作品は映画人のみならず他ジャンルの若い作家達を刺激し影響を与えた。私の小論は映像論をベースにした現代俳句論、当時念頭にあったのは新興俳句の富沢赤黄男、篠原鳳作、西東三鬼等であった。結果、俳句は映像的表現であり秀れたドキュメンタリストがアヴァンギャルドである。と結論づけた、その核心は今もさほど変わらない。
 当時念頭にあった作品は
 
爛々と虎の眼に降る落葉 富澤赤黄男
火口湖は日のぽつねんとみづすまし 〃 
影はただ白き鹹湖(かんこ)の候鳥(わたりどり) 〃 
蝶墜ちて大音響の結氷期 〃 
黒牛の 金剛力の 舌くろく 〃
軍艦が沈んだ海の 老いたる鷗 〃
 
頭の中で白い夏野となつてゐる 高屋窓秋
ちるさくら海あをければ海へちる 〃
青蛾眼は妖しけれども心うつ 〃
月夜ふけ黄菊はまるく浮びたる 〃 
山鳩よみればまはりに雪がふる 〃 
谷の死者氷の墓を揺り起こす 〃
 
椋鳥のぶつかり合ひて渡りけり 渡邊白泉
霧の夜の水葬礼や舷かしぐ 〃
ガス燈の中で鳴いたる千鳥かな 〃
 
 他に片山桃史、西東三鬼等々多くの新興俳句を評論の対象にし、かつ念頭にあったことを思い出す。
 新興俳句の作家は今日でもアヴァンギャルド、読みようにより新鮮である。ところが現在深究する俳人も少なく、かつそれらの秀れた句集も絶版となり作品に触れる機会もあまり無い。この『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』は四十四名の代表句百句も収録している。特に今だからこそ若い俳人達に読まれることをせつに願っている。
 
『現代俳句』平成31年1月号「直線曲線」
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