講評
(小中学生の部)
いよいよ楽しみな夏休みになりましたね。ジュニアネット句会も、4回目とあって、皆さんの俳句作品も上手になってきたと思います。出来れば自分の気に入った句を選句してして下さい。また、お兄さん、お姉さんへの質問があったら、掲示板を使って積極的に聞いてください。待ってます。
句番号作品作者
6宿泊学習の疲れ残して算数です杉本智
楽しかった宿泊学習の後の、最初の授業が算数なんでしょうか、それとも思い出した宿題でしょうか。実感がありますね。この場合、「宿泊学習」とするよりも「林間学校の疲れ残して算数です」とする方が、正解。「林間学校」って季語にあるんですよ。字余りも気になりません。いい句だと思いました。
句番号作品作者
12雨音に合わせてピアノの練習する荻野泰葉
ピアノの音と、雨粒の落ちる音とがいい感じで響いていますね。「六月の雨音ピアノの練習す」とすると、もっと俳句らしくなるでしょう。一句は十七音の短さだからこそ、「合わせて」と言いたいところをうまく省略して表現したいですよね。発想はとても詩的でいいものがあります。
句番号作品作者
16鉄の棒は思い テント設営中広瀬正人
この句、なんだかとっても面白いですね。主人公が「鉄の棒」なんですよ。いっそ「鉄の棒は思うテント設営中」の方が、主格がはっきりしていいと思います。こんなふうに、人間でないものにモノを言わせたり、考えさせたり出来るのも、また一句の発見です。
句番号作品作者
22クルクルと陽射しがまわる額紫陽花コナン
とてもかわいらしい一句です。「額紫陽花」だから陽射しがまわる様子も実感が出ています。雨上がりの午後、といったところでしょうか。きれいな句です。
句番号作品作者
24火がつかないキャンプファイヤー 月笑う浜野総一郎
みんな、期待しているキャンプファイヤーなのに、なかなか火がついてくれない。気はあせる一方です。月にも笑われているのが、返って皮肉な感じと焦る作者を表していていいです。「月笑う」ではなく「笑う月」としてみてはどうでしょう。切れが入ってもっと良くなると思います。
句番号作品作者
26キャンプファイヤー お月さんが熱いという放生有矢
このキャンプファイヤーの場合は、先のとは反対に燃え盛っていますね。参加者の熱気も伝わってきます。威勢のいい炎に、月も迷惑しているような擬人法がよく効いています。「お月さん」ではなく、「お月サマ」とした方が、ちょっと月をちゃかした格好にもなっていいかも。
句番号作品作者
29炊飯の煙もくもく セミ鳴いてる荻野泰葉
煙ばかり出てしまってなかなか炊飯できない様子がいいですね。「セミ鳴いている」も暑さと苛立ちをよく表していると思います。ただ、「蝉が鳴く」ときっぱり言いきった方がもっと良くなるでしょう。
句番号作品作者
39テントの中は狭い リュックが多すぎる山本克海
正解は「テントが狭い 夏のリュックが多すぎる」です。表現しようとしている事がとっても良いので、惜しい。一句の中では言葉の整理も大切です。「テント、狭いよー」「えー、みんなここで寝るのー」「なんでこんなにいっぱいリュックがあんだよー」そんな会話が聞こえてきそうなワィワィした賑やかな様子が見えます。この感覚は大事にしてね。
句番号作品作者
42梅雨続く 算数期末終わったぞ広瀬正人
期末テストの最後が大キライな算数だったんですね。「やっとテストが終わって遊べるぞー」と思いきや、今年の梅雨は長かった!「まーだ梅雨明けしないのかよー」「早くプールで泳ぎたーい!」そんな文句を言いたい天候ですね。よく分かります。共感者の多い一句だと思います。
句番号作品作者
48息継ぎする 飛ぶ鳥確かに見えました渡辺雄太
きっとプールでの事でしょう。息継ぎをして顔を出したほんの一瞬に見えた空。その一瞬の時間を切り取ったのが上手。「ものの見えたる光」なんて、芭蕉サマも言っておりますが、一瞬の感動、感覚を切り取るのも、俳句の醍醐味。この感覚も大切にして欲しい。