講評
(小中学生の部)
こんにちわ。ジュニアネット句会、第2回目の総評です。前回に続き、全句を見ていてちょと気になった事があります。みなさん、けっこう「分かち書き」をしているんですよね。俳句は十七音の短い詩です。五・七・五で詠むものではありません。意味のある「分かち書き」も確かにありますが、わざわざ言葉を区切る必要はありません。最初はなるべく一行の中に区切りをつけずに詠んでみてください。今回からお姉さんも選句をします。お姉さんの選句作品を中心に、気になった句を講評してみたいと思います。
句番号作品作者
8田植えすむ 列曲がっても水光る荻野泰葉
きれいに苗を植え終わった水田は、どの方向から見てもキラキラと太陽の光を反射して光っている。単純に田んぼの風景を詠んだだけにも見えるけれど、田植えを終えた、すがすがしさも感じさせていて良かったと思います。
句番号作品作者
24半ズボン 田植えのにおいが付いている山本克海
田植えという行為には匂いなんかないけれど、田植えをし終えて帰ってから気が付いた半ズボンの泥汚れには、確かに「田植えをしてきたよ」というなごりが残っているのです。それが「におい」。上手ですね。
句番号作品作者
27歯科検診 電気の光に熱さがある扇朱里
歯医者さんの使う、あの「ヒュイーン」と音のする研磨機(っていうんですか?)の音を思い出すだけで、ぞっとする人もたくさんいるのでしょうね。診察台に座って、ライトを当てられても、決して熱くはないんですが、やっぱり熱く感じてしまいますよね。ワカルなあ!
句番号作品作者
51田植えです 初めの一歩が踏み出せない寺本侑生
この句に関してのみは「田植えする」と「はじめの一歩が踏み出せない」の間の一字空いた空間が効いていると思いました。「さあ、田植えをするぞ!」と意気込んで田んぼに来たものの、沈み込んでゆく田んぼの泥に、ちょっと気持ちが引いてしまった、というもの。ズブズブっと足にからんでくる泥の感触にとまどって、一歩が踏み出せないのです。それが、この一字空いた空白によく表れていると思いました。上手い!
句番号作品作者
56リバウンドのボールをトンネル 山笑う渡辺雄太
「山笑う」は春の山の芽吹きを表した春の季語ですね。でもこの場合、文字通り「山」に「笑」われたと、とらえてもいいですね。草野球でしょうか、エラーして「しまった!」と思った顔まで見えてきそうです。楽しい一句だと思いました。
句番号作品作者
13試合の相手が決まった こいのぼりが泳いでる山本克海
感覚としてとってもいい捉え方をしていると思いました。お姉さんの選に入れなかった理由は、もうちょっと一句の中味を整理して欲しいから。例えば「試合相手決定こいのぼりが泳ぐ」とか。俳句の醍醐味(だいごみ)は、十七音という短い限られた中で、どうやって相手の心に詩を伝えるか、ということです。むだな言葉をなるべく省略して一句を詠むことも大切なことだと考えてください。惜しいと思いつつ、実は、お姉さんのイチオシの一句でした。
句番号作品作者
14鼓笛練習 体育館が熱くなる山本克海
共感する人が多いと思いました。鼓笛の練習をしていて、自分や友達だけではなく、体育館全体、もしかしたら、体育館自身が熱くなって応援してくれているような感覚になる。学校生活ならではの一句だと思いました。
句番号作品作者
40誰もいない図書室 貸し出し当番です渡辺雄太
とってもとっても退屈ですね、誰も来ない日の図書当番。この一句から季節はわかりませんが、青葉の季節が似合いそうです。みんな校庭に出て思いきり走り回っている声が聞こえるのに、僕ったら、図書当番。そんな作者と校庭の風景まで見えてきそうです。出来れば季語を入れてみるともっと臨場感がでるとおもうんですが。「誰もいない図書室当番青葉風」なんてね。字余りも気になりませんでした。
句番号作品作者
50中太鼓の音がずれてる 春の風杉本智
実は、小学校の頃、鼓笛隊で中太鼓を担当していました。細かい音を出す小太鼓と違って、中太鼓って一拍ずれると、ものすごく目立つんですよね。次のテンポもずれてきてしまい、パニックするは、恥ずかしいは、どうしたらいいのか!でも、「春の風」だから優しく許してくれそうです。
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52山吹はおじぎが上手 雨降って寺本侑生
雨粒を受ける山吹のゆれを「おじぎが上手」と、この作者は見たのでしょう。ただの山吹の観察ではなく、こんな風に擬人法で花を詠んでくれると、嬉しくなってしまうお姉さんでした。