講評
(小中学生の部)
 今月はたくさんの投句がありました。
 選句する人もしっかりいて、ジュニア俳句が充実してきたなあと思います。これからが益々楽しみになります。俳句だけでなくきっと生活全体が充実しているのだと思います。
 そう言われてもあまりぴんとこないかな?皆さんくらいの年齢の時は、充実しているとかしていないとかあまり考えたりしないのかもしれませんね。
 では、感想です。
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5エプロンにシチューの匂い春の風ミッキーTJ
 エプロンにシチュー、これだけでなんだか幸せな気持ちになってきます。ミルクとバターのあたたかい湯気、ふんわりまあるいにおい。それが、エプロンにそっと包まれている感じ。
 これはどうしても目を閉じて鼻からにおいを吸い込み「ん〜ん、いいにお〜い」と言いたくなります。それが春の風に乗ってどこかに運ばれていく・・・。とても優しい気持になりました。
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7春の風インクのきれたマイネーム中村郁海
 春の風の句です、この句も。インクがきれるとかすれた文字になってきますね。「せっかく、名前を書こうと思ったのに…」と、ちょっといらっとしたりしませんか?そのいらっとした気持ちは春の風の吹くままにどこかに消えてしまう・・・。
 「マイネーム」という商標のペンはお姉さんもよく使っているから、たぶんあれだなと思いました。また、マイネームが『私の名前』だとしても、ちょっと5月までがんばりすぎたかな?と言うふり返りみたいな気持ちも感じられました。
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19新しい漢字が五つ桜散る中村郁海
 漢字の学習は結構大変、たくさんの漢字を書いたり読んだり、テストがあったり・・・。
 桜散る季節、新学年を迎えて生活も軌道に乗ってきたころ。国語の授業もすすんで、新しい単元に入ると漢字も「また新しいのが出たぞ」って言う気持ちなのかな?
 一見「漢字」と「桜散る」は関係ないようにも思えました。でも、「漢字」が身近にある皆さんの学校生活の何気ない様子と「桜散る」という時間的な流れのある季語。この二つの取り合わせがよかったのではないかなと思います。
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25ねこはしゃぐつくしのロケット発射するハゲール
 「つくしのロケット」がとてもいいと思いました。そう言われてみれば、つくしはよく見ると「ロケット」のようですよね。そして、実際につくしが伸びてくるころで猫がはしゃぐのかどうか?これも言われてみれば気づくことで、言われないと考えませんでした。
 「つくしのロケット」で「猫はしゃぐ」は作者の発見だと思います。こういう自分だけの発見がうまく俳句になると俳句ってさらに面白くなってくるのではないでしょうか?これからも発見のある楽しい俳句を期待します。
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39好き嫌い なくなる予感 桜さくドナルドマクドナルド
 「心象」と言うことばを思い出しました。辞書で調べてみると『見たり聞いたりしたことが基になり、意識の中に表れてくる像や姿。自ら経験した感覚や印象によって心の中に表れてくる像・イメージ』とあります。
 「好き嫌い」と言えば食べ物のこと?人の「好き嫌い」もあるのかな?
 桜の咲く季節に「ちょっとがんばってみようかな」という、ゆるやかな決意を作者はしたのでしょうか。それとも進級してなんとなく好き嫌いがなくなる予感がして「桜が咲く」姿を思い出したのでしょうか。
 どちらにしても、進級したことで乗り越えられそうな「好き嫌い」、「なくなる予感」と言ったところが私にはなんともいえない不思議さがありました。