講評
(小中学生の部)
みなさん、春が一歩一歩と近づいてきましたね。
みなさんはどんな時に春を感じますか?お姉さんは、お腹のすき具合かな?何となく春はお腹がすきませんか?体が自然に動いて運動量が増えるせいではないかと思ってます。
自分の体も自然の一部なんですからそういうことってあるのではないでしょうか?
今月は投句も多く選句もしっかりされていました。
お姉さんのほうがたじたじになってしまうほど素晴らしい句が多かったと思います。
春に向けて俳句もぐーんと伸びていける予感がします。
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6ミョウバンの結晶に顔うつるドナルドダック1
 ミョウバンの結晶づくりは、確か一度やったことがあります。再結晶化するのを観察したことがあります。かなり大きくなることもあるらしいですね。温度を下げると急速に結晶化するのではなかったかと思い出しました。ミョウバンは家庭では漬け物の色をよくするために使われたりしています。水に溶かしてにおい消しにもなるとか・・・。
 俳句に詠まれるとは、思いもよりませんでした。顔が映るほどに寄せて観察している様子がうかがえます。五・五・五で、きりっとした感じで収まっています。ただ事実を詠んでいるだけのようですが、作者の思いも伝わってきます。結晶する時間を仲間と共有すること、その時にしか味わえないものですね。その時間の貴重さは、誰にもありえるけど気づかない人が多いのではないかと思いました。すっきりとしたクールな感じがいいと思います。
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12雪しんしん 練習不足のピアノひく野花
 「雪しんしん」の「しんしん」はオノマトペ「擬音語・擬声語」ですね。「しんしん」は雪の降る音だけでなく、様子や静かさも表すことばだと思います。そこにピアノを持ってくる作者の感性が光っていると思います。しんしん「深深」とかくようですね。
 それも「練習不足のピアノ」弾いているのはもちろん作者?練習不足のピアノを弾くときのちょっとの焦りとちょっとの後悔とあきらめと…、今度こそはしっかり練習するぞという気持ちも。しんしんと降る雪との取り合わせがとてもいいと思いました。練習不足のピアノの音も作者の様々の思いもすべて覆いつくすように静かに雪は降っているのだろうと想像しました。
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22呼びなれた名前に 様 年賀状ハゲール
 冬休みの楽しみといえば、年賀状の届くのを待って、「おっ、きたきた・・・」と郵便受けをのぞくこと。懐かしい人や、最近知り合ったばかりの人からも来ていたりします。
 この句では、よく知っているいつもの友達への年賀状、「様」をつけてみると何だかよそよそしいような、恥ずかしいような、くすぐったいような気持ちになったのではないでしょうか?
 様子がよくわかるとともに、作者の気持ちもよくわかります。一枚の年賀状からこのように俳句ができるんですね。「様」の一文字からといってもいいかもしれません。作者の感じる力、表す力が結晶のように俳句という形となって表れていると思いました。 「様」の前後に間をとっているのも表現的によいと思います。声に出して読むときの微妙な間の取り方ができてさらに面白いなあと思いました。
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25カレンダー 長い一年 始まったデラックスバイオレンス
 カレンダーの表紙の部分を切り取って、1月にすると「ああ、一年が始まるんだな」という気持ちになりますね。一年間をざっと思い描いてみると、春が来て、夏が来て、秋が来て、また冬が来て・・・・。変わらない一年の流れですが、作者にとってはきっと別の理由や意味があって、今年の「一年」が特別に長く感じられるようだったのではないかと思いました。
 「始まった」という言葉から、「一年は始まっているんだぞ」と自分に言い聞かせているような気がします。決意のようなものも感じたのですが。一年を自分なりに納得するようにがんばっていけるといいですね。
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27マラソンの息切れ 白いco2布香
 作者はマラソンの時の気持ちや様子を素直に表しているとのだと思います。「CO2」と元素記号を詠んでいて目をひきました。
 「CO2」二酸化炭素、人間の出す息の中に含まれている原子、分子。人間の体も地球上のすべてのものも多くの原子、分子からできています。人間の目には見えないけれど、科学的にはいろいろなものが見つかって記号や模型で表されていますね。(あまり詳しくはないのですが…)
 人間の体もいつかは消えてこの原子のレベルでは何かになって生まれ変わっているのだと聞いたことがあります。今、生きている自分という生物は「意識」や「言葉」や「感情」を持つ大きな原子の集合体として形作られています。その生物「自分」はたくさんの「ことば」を生みだしています。有害なものもあります、でも使い方や量さえ考えて使えば、ものすごいこともできる。「自分」そして自分の出す「ことば」を使って表現するこの俳句というもの。俳句もまだまだ奥が深いなあ。
 この句からのお姉さんのイメージは人間の体から出るもの「CO2」≒「ことば」と広がってしまってこんな感想になりました。勝手な想像で失礼しました。