現代俳句コラム

合歓の花君と別れてうろつくよ金子兜太
 兜太の一句を選ぶのは難しい。所謂、代表句と言いたい作が余りにも多いからだ。そのことをもって金子兜太なのだと思う。
 俳句の主題も、言葉の種類も、言葉の使い方、表現法も様々で、夫々の魅力を発散している。そのことが、時代と正面から向き合って生き、向き合って俳句を詠み続けた金子兜太という俳人の特長なのだと思う。
 「水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る」の第二、第三の人生の始まり、「霧の村石を投うらば父母散らん」の産土への思い。「熊飢えたり柿がつがつと食うて撃たれ」の現代の地球との対峙。その中での極めて個人的日常の思い、極めて正直な大の男の情が、掲句にある。
 少し前までの主題にはなかった、それまではあまり見せなかった、普通の一人の男の極めて個人的な思いの吐露。恥ずかしげもなく呟かれた個人的妻恋の呟きが、そのことをもって個人を離れる。俳人としての、若くはない大の男の、普遍的な姿を見せる。
 平凡とも言えるそのことによって、個人の思いは個を離れる。呟きが作品になる。妻に先立たれて「うろつく」男は世に多いだろうけれど、「君と別れてうろつくよ」と呟いた男は多くはない。例え「うろつく」日々であっても、そのことを言葉に移すことを思いつかない。それほどには意識しないのが普通の男。
 「合歓の花」という言葉を付け加えることで、個人の妻恋いの情が、作品としてこの世に定着し、残った。
 
※『現代俳句』2018年7月号金子兜太追悼特集「忘れ得ぬ一句鑑賞」より
評者: 池田澄子
平成30年10月25日

インターネット俳句会

いつからか雨戸の開かぬ柿の家
新井国夫
踏切の矢印二巡あきしぐれ
じゃぐ

インターネット俳句会「一般の部G1」高点句

得点番号俳句俳号
1873器量好しだけが都会へゆく林檎川崎果連
14360日記書くコスモスのほか全部嘘倉木はじめ
1458焼芋を割って二つの笑顔かな川嶋いさを
1112団栗の音を転がすトタン屋根祥風
108半眼の大仏秋を聴くごとく咲く子
9330犬小屋に前脚そろふ良夜かな石田晴
9262新米やお乳をあげるやうに抱き椋本望生
9741自然薯の紆余曲折の長さかな  恋怒
9197まだ少し老いの伸びしろ破蓮石原素人
9755どんぐりを落として空を軽くする耳目
9111産声は山河にとどき柿日和本町ゑみ

インターネット俳句会「一般の部G2」高点句

得点番号俳句俳号
15690秋深し本の余白に父のメモ大隈隼人
1396一日がふとほどかれて月明かり文女
11203一村を湖風に浸し冬に入る二軒
11169てのひらは受け取るかたちラフランス有瀬こうこ
10602大空にピント合はせる林檎かな露砂
10256赤とんぼ容れて講義の始まりぬ伯雲
7588合鍵はポインセチアの鉢の下れんの町
7499息つめし少女間近に赤い羽根新美ひでき
745サツマイモ個性豊かに育ちけり日々耕人
7163自転車で大根一本買いに行く春野一重