現代俳句コラム

半円をかきおそろしくなりぬ阿部青鞋
 一般的にはそれほど知名度は高くないけれど、もっと名前が知られてもいいのになあ、と思う俳人が幾人かいる。阿部青鞋は僕にとって、そのような俳人の筆頭である。この空恐ろしいほど卓越した独特のセンスを持った俳人を、もっと多くの人に知ってもらいたいと感じる。
 この句は、とてもシンプルで、しかしながら何かの世界の核心のようなものをずばりと突いている。それは、一寸の狂いもなく。だがしかし、だとするならそこでの「核心」とは何なのか。言うまでもなく、この句は有季でも定型でもなく、いかにも俳句的ではない。しかしそれはただ単に俳句のルールに逆らっているというより、俳句やそれを含む人間の文化的な営み、さらに言えばそれを取り囲む自然界の営み、それらをすべて超越している、と考えたほうがよい。
 鍵はもちろん、半円にある。円型(あるいは少なくともそれに近しい形)であれば、実は自然界にけっこう存在する。水の波紋などがそうだろう。円はある意味で自然界の力のバランスに叶っているからだ。しかし、半円となればそれはむしろ幾何学の世界になる。抽象の世界だ。それは人間の文化や、さらには自然界の存在も超えた、どこか時間を超越した抽象性とも言える。そのようなものを前にした人間の感情は、もっとも根源的なものを前にした感情となり、どこか「恐怖」のようなものが混じるのも理解できる。それは人間の中に横たわるもっとも深層の感情のようにも思われ、であるがゆえにそれはどこか圧倒的な感情でもある。表面的なルールだけではなく、きわめて根源的な部分で俳句という枠を超えたものとして、強い存在感のある句となっている。
 
※『俳句の魅力 阿部青鞋選集』(沖積舎)
評者: 小野裕三
平成30年1月16日

インターネット俳句会

少し右向きが好きです初鏡
山口冬人
二つしかない眼いま雪みている
氷口惠

インターネット俳句会「一般の部G1」高点句

得点番号俳句俳号
1786記憶よりちひさき母校実南天齊藤眞人
13131縄文の顔になりたる日向ぼこ熊谷古錐
12638手袋を綺麗に外すフランス語みつき
11685ゆっくりと海は初日を押し出しぬ有栖奈呂
10344日向ぼこ余生ゆつくり裏返し田井遊歩
8293蒲団干す青き地球の一隅に石田晴
8472いつまでも見送る父の冬帽子幸江
7466雪掻いて介護してまた雪を掻く木田硺朗
717去るときは詩人となりて焼芋屋青石
7343翼持つものの孤独や冬の海橘八州
7453大熊手買うて社長と呼ばれけり暁兵
7194もの言わぬ日々や切干よく乾く昌司
785冬晴を裏返しても青ならむ風の鳥
7137交番の奥にサンタの貸衣装藤井寿豊
7112煩悩の旅まだ半ば除夜の鐘大地佐保

インターネット俳句会「一般の部G2」高点句

得点番号俳句俳号
17224山一つ暗くなるまで冬田打つ青ゆず
16287あやとりの橋を渡りて冬来たるかをり
12314煮凝や女ばかりのはかりごと二木寒山
10402チョコレート割る音軽し小春かな竹島睦
927不意打ちの別れの言葉鎌鼬居並小
8782汽笛より半音高く虎落笛ニット
8351山の茶屋暫し焚火の客となる長岡加庖
8631掃き終へて明日の落葉を見上げけり前川綠従
8243短日や口紅だけの身だしなみ本町ゑみ
8770百円の中也とボクと冬日向谷啓
8752寒月や落ちたら割れてしまひさう岩間田中礼子