総会・全国大会

第44回現代俳句全国大会

目次

大会報告

大会風景 大会風景
大会風景

第44回現代俳句全国大会は、平成19年10月20日、東京上野東天紅で多数の参加者を得て盛大に開催されました。

全国からの応募句数は1万4304句でした。のべ149名の選者による選考の結果、現代俳句大会賞2句、毎日新聞社賞1句、六十周年記念賞2句と、別に秀逸賞17句、佳作賞50句が表彰されました。

また、協会年度作品賞(好井由江氏)、現代俳句評論賞(高岡修氏)、現代俳句新人賞(山戸則江氏)の表彰もあわせて行われました。

田中優子氏(法政大学教授・江戸文化研究家)の講演「俳諧ネットワークと江戸の文化」では江戸文化の「ミタテ(見立て)」、「ヤツシ(窶し)」と「ウシロ(後ろ)」の多層構造についての興味深いお話がありました。

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各賞発表

現代俳句全国大会賞

迎え火やかすかに櫂の音のして愛知県名古屋市前田 花野
戰が来ないようにいっぱい葱植える兵庫県神戸市田口 美喜江

毎日新聞社賞

太陽をころがしながら梅を干す山口県光市相本 寿美子

六十周年記念賞

海底まで良夜なるべし激戦地福島県福島市鈴木 満喜子
馬という淋しき視線桐の花青森県青森市貝森 光洋

(右から前田花野さん、宇多会長、田口美喜江さん、相本寿美子さん、鈴木満喜子さん)

特別選者のうち五氏に、各々の特選三句を中心に講評して頂いた。
◇宇多喜代子会長
綿虫の体温があつまっている   富田 敏子
鮟鱇が少しの間横になる     上野 昭子
電線でつなが家並春の雪     小橋 柳絮

「綿虫」の"体温があつまっている"ととらえた意外性、「鮟鱇」のもののあわれ、「電線でつながる」に見える切なさ。口語体の効用にも共感。
◇阿部完市氏
ボルネオに星の出る頃牛冷す   小野江まち子
やわらかくなるまで煮よう朧月  秋田 月歩
開けておくべし啓蟄の非常口   村井 和一

「ボルネオ」をはじめ、ピンときたものを選んだ。その時の状態で多少違ってくるだろうが、詩には自己主張が必要と思っている。
◇倉橋羊村氏
湯ざめしてふっと昭和の中に居る 三沢 容一
ほんとうは並びたくない葱坊主  安原南海子
風が好きにんげんが好き江戸風鈴 畑  佳与

「湯ざめ」の昭和にもどる感慨に共鳴。「葱坊主」の本音の部分にはいろいろな解釈が出来るだろうが、ストレートな表出に共鳴。
◇小宅容義氏
或る夜から小さな蛇と同居せり  下村 洋子
ままごとのどこからだって草萌える 小高 沙羅
聖書から虚子までさらす曝書かな 山本 敏倖

「或る夜」きめどころは<せり>だけだが、句が循環している感覚。「ままごと」のピンとくるかわいらしさ、「聖書」の思い切った表出に迫力があり、<聖書>が大変効いている。
◇寺井谷子氏
被爆の木の一本として我らあり  中村 重義
わたくしをひらいてみればきつとゆふがほ  永野 史代
自分史の冬の部にあり満州は   安西  篤

応募の時期の関係もあって夏期の句がおおく、そうすると私はどうしても戦後風景にひかれてしまう。「被爆」はそうした風景を表出して見事。「ゆふがほ」平仮名ばかりでまとめて句姿の整った句。「自分史」自分を意識した時にうまれる<なにか>をとらえて共鳴。
応募句一万四千三百余句のなかからの選句はさぞやと選句のご苦労がしのばれるコメント。とはいえ、ピンとくるものとか、思い切った表出とか、自己主張を大切にといった言葉の中に、作句の際に心せねばならないなにかを示唆いただいたとかんじている。
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特別選者特選句

金子 兜太選
      海底まで良夜なるべし激戦地福島県鈴木満喜子
松澤  昭選
      退屈な樹から落葉の始まれり群馬県岡田美恵子
宇多喜代子選
      綿虫の体温があつまっている東京都富田 敏子
阿部 完市選
      ボルネオに星の出る頃牛冷す静岡県小野江まち子
倉橋 羊村選
      湯ざめしてふっと昭和の中に居る神奈川県三沢 容一
小宅 容義選
      或る夜から小さな蛇と同居せり千葉県下村 洋子
村井 和一選
      ほんとうは並びたくない葱坊主埼玉県安原南海子
森下草城子選
      一村を叩き尽くして夕立去る群馬県中村 恭子
山崎  聰選
      寝返りし向ふの闇も熱帯夜東京都山崎三樹夫
田中 不鳴選
      水打ってすこし地球を軽くする茨城県篠﨑 六美
寺井 谷子選
      被爆の木の一本として我らあり福岡市中村 重義
安西  篤選
      終戦忌母に捧げし父の挙手東京都山口 楓子
伊丹三樹彦選
      馬という淋しき視線桐の花青森県貝森 光洋
内田 園生選
      切株の父立ち上がる敗戦忌千葉県秋谷 菊野
大山安太郎選
      湯ざめしてふっと昭和の中に居る神奈川県三沢 容一
木村 敏男選
      水打ってすこし地球を軽くする茨城県篠﨑 六美
齊藤 美規選
      馬という淋しき視線桐の花青森県貝森 光洋
藤村多加夫選
      停車場に干物のある終戦日愛知県常磐 惠一
吉田 未灰選
      竹寺の竹の奥まで良夜かな神奈川県多田 武峰
和田 悟朗選
      捩花や身をはなれゆく文字・数字東京都柏田 浪雅
石崎 素秋選
      あどけなき神もいませり里神楽愛知県前田 花野
平川 雅也選
      人間もまた絶滅種蛍とぶ神奈川県西嶋 淑子
山口 いさを選
      白地着て喉仏より歩き出す静岡県いなばちよこ
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秀逸賞

まっすぐな雨真っ直ぐな五月の木岩手県新山のぼる
わが墓標*蝉の鳴く木のままでよい東京都岡島 昭二
光にも重さのありぬ麦を踏む埼玉県稲葉明日香
階段が途中から無い春の家東京都富田 敏子
戰爭が立っているので草を刈る愛知県磯村 鉄夫
水平に村ねむらせて蕎麥の花神奈川県高橋フミ子
水打ってすこし地球を軽くする茨城県篠﨑 六美
春キャベツ隙間だらけの家族です福島県宇川 啓子
鶏頭の中のひとつはダリの耳福岡県中川屺城子
村中の音のつながる秋祭京都府林  日圓
海底はまだ明け切らぬ沖縄忌山口県片山 放魚
広島や炎天に置く万の椅子千葉県石﨑多寿子
人間もまた絶滅種蛍とぶ神奈川県西嶋 淑子
麦秋を国防色と母は言ふ福島県平子 玲子
湯ざめしてふっと昭和の中に居る神奈川県三沢 容一
着ぶくれて声の大きい方につく奈良県前田ゆきお
自分史の冬の部にあり満洲は東京都安西  篤
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