総会・全国大会

第42回現代俳句全国大会

目次

大会報告

大会風景 大会風景
大会風景

 第42回現代俳句全国大会は、平成17年10月22日(土)、東京上野の東天紅で多数の参加者を得て盛大に開催された。森下草城子の開会の言葉につづき、松澤会長のあいさつ、大会実行委員長・大坪重治、毎日新聞社代表・上遠野健一氏の挨拶が行われた。上遠野氏は「俳句はエコロジーである。幅広い年代の人々が環境を考え、人の生き方を考えて作句するとよい」と述べられた。
 その後、第25回現代俳句評論賞の柳生正名、第6回現代俳句協会年度作品賞の市川葉、第23回現代俳句新人賞の高橋修宏各氏らの授賞式、次いで大会作品の大会三賞、特別選者特選句、秀逸、佳作の披露、講評、表彰が行われ、受賞者がそれぞれ喜びと感謝の気持ちを述べた。

<松澤昭会長>
自然を再認識するという新しい俳句の発想が生まれつつある。
「八月やいっぽんの木に逢いにゆく」木を認識して、その向こうにある痛ましさ嬉しさを表現した。
「麦を踏む富士へ近づいては戻り」くびすを返す動作により富士に対する新しいビジョンを示した。
「人間を入れ替えている春の椅子」木の椅子をメルヘンチックに捉えた。

<倉橋羊村副会長>
「八月は昭和の蓋が閉まらない」敗戦に対するもろもろの思いが窺える。
「信長に近づきすぎた羽抜鶏」羽抜鶏から思いが広がる。
「使わずに減る香水と持ち時間」時間と香水から、ひと時ひと時を大事に生きていかねばならぬことを自分に問いかける形で表現した。

<和田悟朗副会長>
「直線は曲りやすくて花葵」曲りやすいことをはっきり認め、世の中で直線であることは難しいと感じている。

<宇多喜代子副会長>
「杭一本が全景の二月かな」杭一本で二月の蕭然とした景を表現した。
「馬の顔半分桶に夏の雲」即物具象。生命力、夏のエネルギーを感じさせる。
「栗の花少年老いてなほ少年」永遠、憧れを思わせる。

<山崎聡幹事長>
「夕焼けを引っ張ってくる三輪車」嘘のなかに真実がある。
無点の中にも良い作品があった。大会は祭であるからむきにならずに作品を作るとよい。

 休憩後、NHKエグゼクティブアナウンサー松平定知氏の記念講演「『その時、歴史が動いた』の現場から」と題する記念講演が行われた。放映中の人気番組とあって聴衆の関心も高く、事実を以って語らしめる番組をエネルギッシュに語る氏に引きこまれた。
 最後に次期の大阪大会が披露され、津根元潮副会長の閉会のことばで全国大会の幕を閉じた。

(杉山よし江)
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各賞発表

現代俳句全国大会賞

八月やいっぽんの木に逢いにゆく埼玉県さいたま市森 寿賀子
麦を踏む富士へ近づいては戻り埼玉県桶川市田口 武

毎日新聞社賞

人間を入れ替えている春の椅子北海道勇払郡鴎川町宮脇 木脩
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特別選者特選句

金子 兜太選
      いつも今なり鏡中のわが裸東京都渋谷区佐藤 洋子
松澤  昭選
      八月やいっぽんの木に逢いにゆく埼玉県さいたま市森 壽賀子
阿部 完市選
      地球儀の日本は赤い唐辛子京都府舞鶴市林 日圓
倉橋 羊村選
      八月は昭和の蓋が閉まらない茨城県水戸市松田 理恵
和田 悟朗選
      直線は曲りやすくて花葵新潟県長岡市水沢 流史
小宅 容義選
      麦を踏む富士へ近づいては戻り埼玉県桶川市田口 武
宇多喜代子選
      杭一本が全景の二月かな東京都世田谷区田中いすず
村井 和一選
      蝿が見ているわたくしのどこだろう東京都世田谷区田中いすず
津根元 潮選
      悲しみが背なかに廻る日向ぼこ埼玉県さいたま市前田 虹雨
森下草城子選
      かたつむり大僧正とおともだち栃木県足利市前原 良子
山崎  聰選
      夕焼けを引っ張ってくる三輪車千葉県松戸市阿部 良子
内田 園生選
      梟の居らぬふりして居りにけり三重県四日市市水谷 正司
大山安太郎選
      帰省して太平洋に抱かれをり徳島県徳島市井形千代子
木村 敏男選
      地球儀の日本は赤い唐辛子京都府舞鶴市林 日圓
齊藤 美規選
      六林男逝く俳句の中で立ちしまま埼玉県さいたま市久保田耕平
藤村多加夫選
      憲法を考へてゐる蚊帳のなか愛知県豊明市橋詰 四郎
星野 紗一選
      預かりし猫恋猫にして返す愛媛県新居浜市神野 園子
吉田 未灰選
      炎天を来し機関車に水呑ます北海道茅部郡森町亀谷 重直
伊丹三樹彦選
      菜の花の海より出し肩車神奈川県横浜市滝田 芳順
小川双々子選
      何事もなき日の疲れ水中花東京都江戸川区長峰 竹芳
柴田 白陽選
      蠅取紙に昭和の残る漁師の町大阪府四条畷市筒井 芳美
石崎 素秋選
      里神楽果てて神々むすび食う東京都目黒区半澤柯年央
伊藤 松風選
      墓洗ひ真正面から老いてゆく埼玉県狭山市横坂けんじ
立岩 利夫選
      馬の顔半分桶に夏の雲石川県白山市中川 順友
平川 雅也選
      麦秋のかなたに昭和立っており東京都大田区川名つぎお
山田 緑光選
      いつまでも戦後さくらの木に登り福岡県北九州市角谷 憲武
横山 房子選
      馬の顔半分桶に夏の雲石川県白山市中川 順友
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秀逸賞

墓洗ひ真正面から老いてゆく埼玉県狭山市横坂 けんじ
地球儀の日本は赤い唐辛子京都府舞鶴市林  日圓
いつまでも戦後さくらの木に登り福岡県北九州市角谷 憲武
ひぐらしのきれいに通るからだかな沖縄県豊見城市座安 栄
さえずりそうな草餅をもらいけり東京都品川区山崎 佳子
夕焼けを引っ張ってくる三輪車千葉県松戸市阿部 良子
八月は昭和の蓋が閉まらない茨城県水戸市松田 理恵
長生きの途中銀座の夏帽子東京都中野区梅村 達子
父の木がいっぽん生えている海市千葉県船橋市直江 裕子
杭一本が全景の二月かな東京都世田谷区田中 いすず
鮎食べて四万十川の横に寝る埼玉県さいたま市
下山田
補陀落の見える辺りに梅を干す千葉県木更津市加藤 法子
八月は鶏のかたちに水を飲む北海道足寄郡陸別町伊藤 畠夫
馬の顔半分桶に夏の雲石川県白山市中川 順友
悲しみが背なかに廻る日向ぼこ埼玉県さいたま市前田 虹雨
野をよぎる蛇も少女も真水です福岡県柳川市鳥巣 徳子
いちまいの落葉となりて熟睡す東京都世田谷区浅野 昭治
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佳作

炎天を来し機関車に水呑ます北海道茅部郡森町亀谷 重直
胎の子に手を添え茅の輪潜りけり千葉県千葉市伊勢 鏡一郎
何事もなき日の疲れ水中花東京都江戸川区長峰 竹芳
黙祷の日傘一斉に畳まれる福岡県北九州市中村 重義
線香花火もう一方の手が暗い東京都町田市山崎 せつ子
信長に近づきすぎた羽抜鶏島根県松江市加茂 踏青
ナガサキ忌夜はまっさおな魚を食い福岡県北九州市中村 重義
水中花胎児の呼吸しておりぬ神奈川県横浜市服部 雅子
子どもの日ゴリラはずっと後ろ向き茨城県土浦市平佐 悦子
泳ぎ来て女は海をしたたらす茨城県結城市西 登喜子
空腹というみずみずしき夏野東京都品川区今岡 昭栄
いつも今なり鏡中のわが裸東京都渋谷区佐藤 洋子
かたつむり大僧正とおともだち栃木県足利市前原 良子
切口を鋭角にして夏料理大阪府堺市高橋 千代
まだ少し濡れてをりたる蝉の穴山口県下関市藤井 増丸
六林男逝く俳句の中で立ちしまま埼玉県さいたま市久保田 耕平
梅漬けてより物忘れはじまりぬ千葉県市原市松本 弘子
汗のシャツひっかけてある爆心地千葉県松戸市横山 冬都
立夏かな大きな靴が脱いである東京都品川区山崎 佳子
海の日につづく洗濯日和かな東京都世田谷区富田 敏子
花の昼こんにゃくも淋しさもよく噛む東京都世田谷区富田 敏子
ラムネ抜く音にあつまるほとけたち千葉県銚子市明石 春潮子
火を噴くぞ噴くぞと山は笑ひけり茨城県石岡市小池 つと夢
順番に覗かれている冬牡丹千葉県柏市保坂 末子
にはとりのぺたぺた歩く夕薄暑埼玉県狭山市前田 美智子
蝿が見ているわたくしのどこだろう東京都世田谷区田中 いすず
栗の花少年老いてなほ少年宮崎県宮崎市薗田 よしみ
地引網水母を捨てて終りけり神奈川県小田原市倉持 祐浩
夕焼は言葉があとからあたたまる神奈川県中郡二宮町野谷 真治
一生の途中にさくら又さくら千葉県千葉市吉田 耕史
空の夜の深いところに桃を置く東京都大田区長久保 通繪
ハンカチを胸に刃物のごとく差す神奈川県小田原市山岸 秋光
八月六日父の来ている理髪店群馬県前橋市細野 彩扇
春愁の真ん中に置く喉仏山口県防府市山根 節子
闇に消えわたしの中を飛ぶ蛍東京都世田谷区富田 敏子
菜の花の海より出し肩車神奈川県横浜市滝田 芳順
桜咲く死ぬを忘れて老いにけり長野県松本市降旗 正量
使わずに減る香水と持ち時間福島県いわき市平子 玲子
預かりし猫恋猫にして返す愛知県新居浜市神野 園子
初蝶はとつぜん君のやうに来る東京都文京区長谷川 寛子
帰省して太平洋に抱かれをり徳島県徳島市井形 千代子
大夕焼有頂天とはどのあたり茨城県龍ヶ崎市松本 敬子
月へ発つ小学校の薄氷京都府京都市山中 西放
花を見て首を忘れてきてしまう愛知県豊田市小南 千賀子
青大将殺めた棒で捨てにゆく山口県柳井市松林  慧
波音に縄目がゆるむ干し大根茨城県龍ヶ崎市西村 けい
もう寒くない人に毛布を掛けてゐる埼玉県越谷市佐藤 晏行
立つてゐるだけの消火器猫の恋埼玉県さいたま市松嶋 良子
東京都練馬区春田 千歳
麦秋の中やはるかな火の記憶愛知県豊橋市山本 冴子
寺に嫁し幾度さくら掃きしかな群馬県高崎市植原 悠子
コンバインの稲刈り一人ぼっちかな千葉県夷隅郡岬町佐藤 信顕
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