総会・全国大会

第40回現代俳句全国大会

目次

大会報告

大会風景
大会風景

不忍池に鴨の集まり始めた10月26日、上野・東天紅にて第40回現代俳句全国大会が催された。

安西篤事務局長の司会のもと挨拶にたった松澤会長は、協会の歴史を振り返るとともにいま数の上では盛んな俳句界が迎えている新たな危機を語った。

毎日新聞社代表の祝辞をいただいた後、大会作品の大会3賞、特別選者特選句、秀逸、佳作が披露され、特別選者による講評が行われた。大会賞の池田守一、上田保太郎両氏は、今後とも自分の俳句を創るべく努力する、種々の俳壇に投句して力を磨いてきた甲斐があった、とそれぞれに喜びを語った。

記念講演は、津根元潮副会長との対談形式による写真家・浅井慎平氏の「現代の表現ということ」。落語家の桂枝雀や北斎の他、写真・ガラス工芸・音楽など各分野での表現のかかわり方について触れた講演はリズム感に溢れたもので満席の聴衆を惹き入れた。心地よい興奮のうちに大会終了。懇親会も盛況であった。

(杉山よし江)
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各賞発表

現代俳句全国大会賞

父の日の吊革いっぽんづつに父宗像市池田 守一
母の通夜母と夜なべをするやうに舞鶴市上田 保太郎
池田守一氏上田保太郎氏
受賞者 池田守一氏受賞者 上田保太郎氏
■評(松澤昭会長)■

 レトリックとして、この2句に共通しているのは父と母のリフレインですね。
 このリフレインがいいかどうか、難しい問題があります。草野心平という詩人はリフレインを多用していますが、俳句という定型詩の場合は、よく考えて使うべきでしょう。
 ただこの2句ともこのリフレインはさほど気になりません。上手なこなし方をしています。
 「父の日」の句は、ラッシュアワーの電車のお父さんを描いています。シュールなやや皮肉っぽい句となっています。いまの人間社会の縮図をよくとらえています。
 「母の通夜」の句は、「夜なべをするように」という措辞を使っています。「ように」これは比喩ですが、お母さんと一緒に仕事(夜なべ)をしているようだと、母を亡くした悲しみに「すり替え」をしているわけです。ここは上手いところです。

毎日新聞社賞

大夕焼さみしい木から歩きだす千葉市伊関 葉子
■評(松澤昭会長)■

 「大夕焼」という設定はさほどではありませんが「さみしい木から」に注目しました。
 これは客観語ではなく主観語ですね。言い換えれば観念です。これは写生・写実ではありませんが主観語を使って心象を描いている。  私の近くに小学校2年生の女の子がいます。その子が「遠足でなかよしの木にあってきた」と作りました。これも幼いながらも観念を置き換えた例でしょう。
 観念といいながらリアリスティックな表現も出来るわけです。「さみしい木から」は、いままでとは違った俳句の方法を予見させる句と思えます。

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特別選者特選句

金子兜太選
      こおろぎの貌となるまで農に生く名古屋市鈴木一江
松澤 昭選
      大夕焼さみしい木から歩きだす千葉市伊関葉子
阿部完市選
      かもめ食堂全員で鯵定食東京都富田敏子
倉橋羊村選
      こおろぎの貌となるまで農に生く名古屋市鈴木一江
和田悟朗選
      孔雀に羽広げられても困るなり横浜市小町 圭
小宅容義選
      八月六日缶切りが一周す横浜市大橋一青
宇多喜代子選
      太陽へ首から歩く羽抜鶏市原市
村井和一選
      フラスコに泡をつくって卒業す北九州市告下春一
津根元 潮選
      クジラほど空気を吸って夏の山北本市遠藤秀子
森下草城子選
      春からは牛飼になる大学生東京都山崎佳子
山崎 聰選
      父の日の吊革いっぽんづつに父宗像市池田守一
原子公平選
      火星僅かに水蜜桃へ近づきぬ沖縄県安谷屋之里恵
内田園生選
      じっと滝見ていて滝を見ておらず三重県徳井あつみ
桂 信子選
      八月六日缶切りが一周す横浜市大橋一青
鈴木六林男選
      八月六日缶切りが一周す横浜市大橋一青
大山安太郎選
      白桃の空気を抜いてしまおうか東京都寺井禾青
木村敏男選
      全山の僧が寝返る青嵐福岡市朝田魚生
齊藤美規選
      黙祷の時間もっとも蝉しぐれ大分市坂田正晴
藤村多加夫選
      父の日の吊革いっぽんづつに父宗像市池田守一
星野紗一選
      孔雀に羽広げられても困るなり横浜市小町 圭
吉田未灰選
      ダイインの眼前に蝉墜ちて来し福山市和田照海
伊丹三樹彦選
      父の日の吊革いっぽんづつに父宗像市池田守一
小川双々子選
      火星僅かに水蜜桃へ近づきぬ沖縄県安谷屋之里恵
柴田白陽選
      国のため散ると信じたさくらかな前橋市定方英作
石崎素秋選
      夫の座に夫あり八月十五日東京都田中忠子
内田南草選
      星流れ生きる証の箸洗ふ川越市中嶋 志摩
立岩利夫選
      ラ・フランス見ているうちに裸婦となり横浜市加藤ひろみ
平川雅也選
      父の八月まだ戦場を歩いており北九州市角谷憲武
山田緑光選
      クジラほど空気を吸って夏の山北本市遠藤秀子
横山房子選
      植終へし田に向き乳房含ませる豊田市石川亀代治
和知喜八選
      父の八月まだ戦場を歩いており北九州市角谷憲武
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秀逸賞

じっと滝見ていて滝を見ておらず三重県徳井あつみ
分骨の母を日傘に入れて抱く春日井市林 よね
ハンカチの如きも死者を語るなり豊橋市山本冴子
手の届きそうな山から笑いけり柏市保坂末子
どこにでもしゃがむ若者敗戦忌川口市鈴木久代
佛壇の奥に広がる花野かな鎌倉市柴田朱美
こおろぎの貌となるまで農に生く名古屋市鈴木一江
八月六日缶切りが一周す横浜市 大橋一青
火星僅かに水蜜桃へ近づきぬ沖縄県安谷屋之里恵
遠景のなかの昭和と麦こがし熊本市佐藤恵美子
つぎの世もとんぼのとまる杭でいい東京都やしま季晴
ふくろうが好き階段の下が好き東京都山崎佳子
人間がわからなくなり金魚飼ふ川口市鈴木久代
白桃の空気を抜いてしまおうか東京都寺井禾青
雪だるまの鼻を直して登校す京都市高田たづ子
クジラほど空気を吸って夏の山北本市遠藤秀子
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佳作

すかんぽを噛めば一茶が立っている町田市今井長生
改札を通る大きな夏帽子北海道亀谷重直
海鼠よりすこし大きな声を出し大阪市油津雨休
ぎゅっと絞る檸檬あなたを許さない八王子市蘓原三代
二階より祭見ている一人旅柏市
軍艦の色に重なる冬の雨柏市井上 匡
皿置けば皿にあつまる雪明り横浜市かとうめいこ
雪原の濁点として立っている埼玉県稲垣恵子
寒紅を二度とひらかぬ唇に名古屋市朴 美代子
父の八月まだ戦場を歩いており北九州市角谷憲武
鬼灯のなかまで海鳴りしていたり市原市植原安治
黙祷の時間もっとも蝉しぐれ大分市坂田正晴
誤ってたんぽぽを踏む戦かな柏市希田沙知子
満天の星を揺らしている植田柏市星野一惠
戒名を考えていて餅焦がす大東市木本晴夫
夫の座に夫あり八月十五日東京都 田中忠子
塩鮭やけふも正義の妻がゐる横浜市
毀されるかたちしており梅雨茸徳島市篠原 元
人とゐてひと遠くなる日の盛り栃木市大豆生田伴子
ラ・フランス見ているうちに裸婦となり横浜市加藤ひろみ
戦争のまえもうしろも虫の闇青梅市河村四響
フラスコに泡をつくって卒業す北九州市告下春一
富士山は大きなお墓月見草逗子市大鋸甚勇
海の日の海で老いゆく英霊たち高知県樫谷雅道
栃の実の餅になるまで子守唄羽生市小川紫翠
孔雀に羽広げられても困るなり横浜市小町 圭
星流れ生きる証の筆洗ふ川越市中嶋志摩
軍服の夫しか知らず桐の花鎌倉市
植終へし田に向き乳房含ませる豊田市石川亀代治
起き抜けに蝶は山より大きかり山梨県温井幸子
春からは牛飼になる大学生東京都山崎佳子
太陽へ首から歩く羽抜鶏市原市
全山の僧が寝返る青嵐福岡市朝田魚生
月山へ梯子して摘むさくらんぼ桶川市平井京水
人形の寝かされてゐる夏座敷川崎市鹿野美千代
後ろより戦車が来そうな大麦秋安城市中根和子
稲架組まれ見えなくなりぬ父の墓丸亀市行成英子
ヒロシマの橋擦れ違う乳母車松山市金並れい子
自由ですおたまじゃくしでいるうちは野田市青木一夫
ゆきうさぎたしかにゐなくなつてをり桶川市田口 武
水よりも紙の音する天の川宇部市渡辺美代子
たくさんの鍵のなかから春の海立川市川島一夫
影武者が集まってくる葱坊主藤枝市久遠 順
腸のようなホルンや梅雨月夜川口市小林富美
万緑や死後も目覚し時計鳴り伊東市いなばちよこ
桃を剥くために時計をはずしけり大阪市高橋千代
かもめ食堂全員で鯵定食東京都富田敏子
ひかって帰る東京の子と兜虫新潟市長谷川育子
ダイインの眼前に蝉墜ちて来し福山市和田照海
派兵あり土筆いっぽんずつ摘まれ八王子市原田やすひこ
もてあます自分を月の中に置く立川市津根元 潮
新涼の起点杭うつ測量士あきる野市木下蘇陽
本籍を東京にして秋刀魚焼く東京都小松よしはる
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