総会・全国大会

第39回現代俳句全国大会

目次

大会報告

大会風景A 大会風景B
大会風景

平成14年第39回現代俳句全国大会は、平成14年10月19日(土)午後1時より、レセプションハウス名古屋逓信会館で開催された。
 後藤昌治氏の開会の言葉につづき、松澤昭会長の挨拶、大会実行委員長森下草城子、毎日新聞中部本社総合事業部部長 山田幸伸氏のあいさつが行なわれた。
 山田幸伸氏は「日本語の乱れが指摘されていますが、みなさんの俳句を通じて正しい日本語を生かしていただきたい。」と述べられた。
 その後第3回現代俳句年度作品賞、第22回現代俳句協会評論賞、第20回現代俳句新人賞の授賞式が行なわれた。
 いずれも若い受賞者で、作品賞は女性、評論賞は男性というのも特徴的だった。(詳細別掲)
 記念講演は現代俳句協会名誉会長・海程主宰の金子兜太先生による「俳句を語る」。土着の音律として俳句を位置付け、これが21世紀につながるものと、具体的な例をあげて語られた。会場はしばしば笑いに包まれた。(講演要旨別掲)
 全国大会賞は大西静城(香川県)、毎日新聞社賞は大西雅子(三重県)、松嶋良子(埼玉県)の各氏だった。
 講評は講評者の特選句を中心に行われた。

<松澤昭会長>
「炎天のどこ捜しても平らなり」フィクションを通して現代を見つめなおす。これはいろいろに解釈できるものの、現代の様相をついています。最近はふわふわしたような句が多いが、これはしっかりと時代を見つめています。

<伊丹三樹彦副会長>
「みな海へ出てゆく暮らし海紅豆」、日本というのは海に囲まれています。それを「みな海へ出てゆく」という、わずかな短い言葉で日本人の暮らしを見事に捉えています。

<小川双々子副会長>
「麦秋の中を走ってきて一人」、さきほど金子先生が「土着」ということをいわれましたが、「麦秋」という言葉もそうです。この句は一人の人間としての実感があります。

<倉橋羊村>
「征くひとに嫁して生涯桐の花」、これは出征した人にお嫁に行って、夫が亡くなったか、どうしたかは書かれていないものの、「桐の花」とおいて気持ちがこもった句です。

<和田悟朗副会長>
「これからの時間が匂う夏木立」、時間というのは見えるのか見えないのか。「これからの時間」というものを具体的に「匂う」といって感銘を受けました。

<小宅容義副会長>
「かまきりの汝も少年うすみどり」、この句は並んでいる特選句の中では、微弱な感じを受けるのではないでしょうか。(書かれていない)作者とかまきりと少年との交感の句です。意味を述べないところに感心しました。

<宇多喜代子副会長>
「八月の白い色鉛筆折れる」、「八月」といえば特別な思いがあります、そんな思いを入れなくてもいいとも思いますが、「折れる」とそっけない表現の中で八月への思いがこもっています。

<村井和一副会長>
「麦秋のどこが燃えてもおかしくない」、これ、「麦秋が燃える」はあたりまえですが、それは「おかしくない」が助けています。これをいまの拉致事件と結びつけても読めるところが俳句の面白さです。

 次期大会は東京での開催、実行委員長の津根元潮氏が、名古屋・東海からも大挙して東京にご参加と呼びかけた。増田河郎子氏の閉会のことばで充実した全国大会の幕は閉じた。

(松田ひろむ)
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各賞発表

現代俳句全国大会賞

月の夜の潜水艦に蓋があり丸亀市大西 静城
■評■

一見して時事俳句の感じもせぬでもない。最近の世情を背景にして発想された句かもしれないが、むろん潜水艦にやたらと出没されてはたまったものではない。そんな状況をシニカルに措辞したものと言ってよい。

毎日新聞社賞

玄関を大きな月が入ってくる伊勢市大西 雅子
■評■

この句はメルヘンチックで、また幻想風でもあり中々に愉しい。"大きな"という描写がそんな感じを強めている。同じ月の句でも前句とはだいぶ様相を異にしているが、そんなところも俳句表現の面白さである。

鉛筆にふいに蛍の匂ひするさいたま市松嶋 良子
■評■

鉛筆からすぐに連想できるものは青少年達の学業のことが先ず浮んでくる。更にこの句は蛍のイメージに飛躍する面白さがある。想像力を思いきりよく働かすことも大切であるし、その果てしないひろがりが俳句の世界。

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特別選者特選句

金子兜太選
      かるがると戦車をはこぶしゃぼんだま 近江八幡市 吉本宣子
松澤 昭選
      炎天のどこ搜しても平らなり 名古屋市 谷口智子
伊丹三樹彦選
      みな海へ出てゆく暮らし海紅豆 柏市 希田沙知子
小川双々子選
      麦秋の中を走って来て一人 日立市 鈴木信行
阿部完市選
      けんか独楽雷門をくぐりけり 東京都 山本敏倖
倉橋羊村選
      征くひとに嫁して生涯桐の花 新潟県 田村勝実
和田悟朗選
      これからの時間が匂う夏木立 名古屋市 柴田和江
小宅容義選
      かまきりの汝も少年うすみどり 愛知県 七里みさを
宇多喜代子選
      八月の白い色鉛筆折れる 東京都 富田敏子
村井和一選
      麦秋のどこが燃えてもおかしくない 柏崎市 小林一昭
山崎 聰選
      恐る恐る先生が好き雀の子 守口市 中村純美
内田南草選
      満月が笑うほど田に水を張る 刈谷市 磯村鉄夫
原子公平選
      水を打つ自分が好きになれるまで 野田市 青木一夫
和知喜八選
      青空は一枚の遺書八月来る 北九州市 角谷憲武
横山房子選
      白魚の目玉ばかりが漂えり 柏市 保坂末子
内田園生選
      月へ行く汽車が来そうな田舎駅 龍ヶ崎市 小林暉美
桂 信子選
      躰もう祭り太鼓となっている 蒲郡市 酒井破天
鈴木六林男選
      石榴から秘密は洩れてしまいけり 豊田市 小南千賀子
柴田白陽選
      村じゅうが煮こぼれてゐる油照り 山口県 金子民子
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秀逸賞

白桃の見えない傷に触れている東京都富田敏子
春愁が船のかたちで現るる東京都柏木豊太
死ぬことを忘れて畦を塗ってをり東京都三上 
補聴器をはずして蝉を休ませる秋田市佐々木たま江
麦秋のとこが燃えてもおかしくない柏崎市小林一昭
こんな夜は梟になり母が来る茨城県古家 博
かるがると戦車をはこぶしゃぼんだま近江八幡市吉本宣子
諸葛菜貌のおおきな薬売り愛知県森下草城子
躰もう祭り太鼓となっている蒲郡市酒井破天
父の日の来るたび父の死んでをり西尾市中村正幸
月へ行く汽車が来そうな田舎駅龍ヶ崎市小林暉美
みな海へ出てゆく暮らし海紅豆柏市希田沙知子
遠ひぐらしふところという闇もある東京都棚橋麗未
冬瓜と教へてやれば叩きけり名古屋市大鹿幸三
筍の地に寝かされしさびしさよ高山市谷 岳彦
青空は一枚の遺書八月来る北九州市角谷憲武
けんか独楽雷門をくぐりけり東京都山本敏倖
空蝉を百集めなば一つ鳴かむ宗像市池田守一
これからの時間が匂う夏木立名古屋市柴田和江
水を打つ自分が好きになれるまで野田市青木一夫
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佳作

永遠が見えそうな空さくらんぼ田中幹雄
さくら咲きみんな人間らしくなる加藤法子
抽斗に迷の石ころ夏休み木島静子
消印のないまま秋が来ておりぬ菊地京子
藤房を映して水が重くなる星野一恵
村に帰れば兄きて鯰らおいてゆく杉浦臥竜子
立ちしまま壁に溶けこむ広島忌近藤和代
考へて考へて鴨残りけり斉藤つとむ
麦秋の中を走って来て一人鈴木信行
二百十日潜水艦のように居る安部泰子
献体として現し世に凍えをり木本晴夫
原爆忌少年大きな顔洗う亀谷重直
かげろうは水のたましいかもしれぬ小林千寿子
縄梯子かけて神様いなくなる助田素水
石榴から秘密は漏れてしまいけり小南千賀子
鹿が見送りにきてくれた斜面だ松本悦子
満月の桃は袋の中におり牧 草平
忘却が集る葱坊主の海だ村上 豪
セーターをくぐり抜けては齢をとる松崎麻美
ででむしに触ってごらん雨が降る山田ツトム
敗戦日カルチャーセンターにをりぬ小栗しづゑ
蛍くる人なら三人くらいかな武田伸一
征くひとに嫁して生涯桐の花田村勝美
ヒロシマ忌言葉のように雨が降る山口 剛
大根を真二つに切るもう他人富田敏子
秋桜力抜くこと覚えたり松島美佐子
雲の峯どこかが凹まねばならぬ山沢壮彦
梅干の壺ひとつ殖えひとつ老ゆ江幡定子
棒になるまで蝉しぐれ浴びてゐる星 水彦
立ち上がる曝書のなかの人体図大野ひろし
途中下車しているような昼寝妻金原天夢人
夏座敷兵のかたちの影とゐる鈴木きぬ絵
腸の長さを想う秋の暮藤木経子
夕焼けや人の数だけある故郷植村立風子
ふるさとも母もでんでん虫のまま黒田みなみ
黍畑に音一つなし沖縄忌安澤静尾
空蝉にちから加はる日の盛り伊藤政美
平均的日本胡瓜真直ぐなり山田哲夫
正面を潮騒が来る春の家横地かをる
盆踊り暗いとこより輪にはいる大津秀峰
音へ音落ちて田水の引かれけり柏木喜美恵
人間になりたいと猫昼寝するやすだしげこ
かまきりの汝も少年うすみどり七里みさを
金箔屋より打水の始まれり安藤尚子
恐る恐る先生が好き雀の子中村純美
コスモスに漂う夫を呼び戻す久永妙子
蝸牛牛といふ字は悲しいぞ綾野 竜
杖の要る妻に叱られ羽抜鶏近藤 実
空蝉や祈りというは焦げくさき野間口千佳
村じゅうが煮こぼれてゐる油照り金子民子
一本の櫂のごとくに昼寝せり近藤ひかる
晩夏なり大きな耳が落ちてゐる土田雅彦
蛍きて一つ齢(とし)とる峠の木前田典子
てんとうむしだまし言う通りにしておく水口圭子
噴水を見ていて子供欲しくなる山本左門
ねこじやらし山をあやつるほどでなし木方朝子
炎天を来てまず外す腕時計高本紅女
日盛りの鏡のなかの昏さかな望月雅久
蛍の夜さびしい靴が集まって木之下みゆき
ががんぼの歩きしあとは煙かな中井洋子
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