総会・全国大会

第38回現代俳句全国大会

目次

大会報告

大会風景A 大会風景B
大会風景

平成13年10月27日、上野東天紅にて第38回現代俳句協会全国大会を開催。
会場には協会の出版した句集や評論集が並べられ目を引いた。会長の松澤昭が世の中は暗いニュースが多いが俳句という場を愛しみ有意義に過ごそうと挨拶。毎日新聞社取締役の中島健一郎氏はキッチュ(まがまがしいもの)の対極に俳句はあり、暗い時代に心のやさしい感性がなければ俳句は作れないと述べられた。大会委員長の村井和一の挨拶後、大会作品の佳作、秀逸、特別選者特選句、大会三賞順に披講。

全国大会賞の富田氏と毎日新聞社賞の大坪氏に協会より賞状と薔薇の花束が贈られた。
富田氏は、「見えない不思議な力が加勢してくれた」大坪氏は「自然を見つめ人間を詠ってゆきたい」と挨拶。もう一人の大会賞受賞者鷹島氏は健康がすぐれず欠席された。

講評は講評者の特選句を中心に行われた。

<松澤昭会長>
虚実皮膜により俳句は領域が広くなる。「白桃や」の句のフィクションに面白さがある。「雪に轉んで」はモノローグめき心の温かみがおおからに感じられる。

<小宅容義副会長>
「水に浮く桃どこからも攻められず」は着想が新鮮で、客観と主体がミックスされ詠めている。

<宇多喜代子副会長>
八月やみんな一緒に目をつむり  清水弥生
やの切れ字に万感、中七下五がリズミカルで八月に対する深い思いあり。

<山崎 聰氏幹事長>
炎天のどこもつかまるものなくて 廣橋美翠
日常の当り前のことを角度を変えて詠んでいる。


第2回現代俳句協会年度作品賞は高橋修宏氏が受賞。40歳代の若々しい受賞者に会場より拍手。「定型の力の大きさを感じている」と受賞の挨拶。
第21回現代俳句評論賞は「八木三日女論」の大畑等氏と「高屋窓秋」の守谷茂泰氏二人であった。大畑氏は「その時代を生々しく逃げずに書いた三日女に惹かれて書いた」守谷氏は「俳句に出会い導かれた窓秋に感銘を受けた」と述べた。
第19回現代俳句新人賞は、守谷茂泰氏、評論賞とのダブル受賞。これからの期待を担う作家の誕生である。
講演は、半藤一利氏による「草枕と漱石俳句」ユーモアあふれる洒脱な話し振りに会場の人たちは引き込まれた。
秋高しという言葉がぴったりな一日、全国大会の幕は閉じた。

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各賞発表

現代俳句全国大会賞

水に浮く桃どこからも攻められず東京都富田 敏子
■評■

この句は実景として鑑賞するよりは、"攻められず"なる措辞のからくりとして認識される。心理の思い入れがあって、俳諧味が濃い。

現代俳句全国大会賞

雪に轉んで長生きの途中かな小樽市鷹島 梵子 
■評■

老来の思いを述懐めかしているが、大らかな死生観が根っこにあるようで、一向に陰湿でない。余裕のある人生の晩節と言えよう。

毎日新聞社賞

白桃や家の中にも波打ち際東京都大坪 重治
■評■

映画のモンタージュ手法のように思いきった仮構を楽しむ。そんな独断の面白さは現代俳句のひろがりを示して余りないと思う。

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特別選者特選句

金子兜太選
      曝らす書に死者の電話が書いてある 構浜市 鈴木ひろし
松澤 昭選
      あとがきを考えている桜かな 横浜市 大橋一青
伊丹三樹彦選
      幾度か父を憎みし墓洗ふ 総社市 尾関当補
小川双々子選
      ただようておりくず切を噛んでおり 東京都 富田敏子
阿部完市選
      憲法九条蝉という字は弾に似て 福岡県 武藤不二彦
倉橋羊付選
      死ぬ力残して春を病んでをり 東京都 飛永百合子
和田悟朗選
      雪に轉んで長生きの途中かな 小樽市 鷹島梵子
小宅容義選
      水に浮く挑どこからも攻められず 東京都 富田敏子
宇多喜代子選
      八月やみんな一緒に目をつむり 東京都 清水弥生
村井和一選
      蚊を叩く掌大き過ぎまいか 吉川市 樽谷俊彦
山崎 聰選
      炎天のどこもつかまるものなくて 東京都 廣橋美翠
内田南草選
      わがままな人を愛して蕗を煮る 東村山市 徳田英子
佐藤鬼房選
      かげろうの産み落としたる赤ん妨 京都市 喜多陶子
原子公平選
      原爆忌押してはならぬボタン増え 四條畷市 田中浩一
和知喜八選
      あふむけに泳げば父の雲ありぬ 秋田県 石黒茂堆
三橋敏雄選
      いつからか大人ばかりの子供の日 横浜市 中西美代
横山房子選
      まだ空へのぼる途中の凌霄花 柏市 希田沙知子
内田園生選
      私語のように関東平野芽吹きだす 東京都 桜木美保子
桂 信子選
      骨壷の確かなほかはみなおぼろ 鎌倉市 高橋俊彦
鈴木六林男選
      緑陰へ移す寝息の乳母車 神戸市 新田硯水
柴田白陽選
      ヒロシマ忌けむりのような馬車が発つ 市原市 植原安治
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秀逸賞

死ぬ力残して春を病んでをり 東久留米市 飛永百合子
一直線はさびしいかたち羽抜鶏 北九州市 池田照子
骨壷の確かなほかはみなおぼろ 鎌倉市 高橋俊彦
ヒロシマ忌けむりのような馬車が発つ 市原市 植原安治
夕焼けて犬にもうしろ姿あり 福岡市 松岡耕作
妻の手の高さに遺る釣しのぶ 千葉市 北奥敏夫
瓶はみな唇を持つ春の空 流山市 田中素鳳
炎天のどこもつかまるものなくて 東京都 廣橋美翠
わがままな人を愛して蕗を煮る 東村山市 徳田英子
緑蔭へ移す寝息の乳母車 神戸市 新田硯水
ひらがなのやうにひもとく花衣 柏市 岩見ちづる
軍艦を妊っている冬の湾 北九州市 角谷憲武
噴水の差し上げてゐる死後の景 千葉市 時田久子
本籍が置いてあるだけ棗の木 豊田市 小南千賀子
退屈な樹から毛虫の降りて来る 茨城県 仲居いみ子
印鑑のどれもきずもつ十二月 都留市 柳靜香
小鳥来る父の居そうな理髪店 久留米市 森永靖子
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佳作

人形はいつも目をあけ雪降れり 北九州市 井上多実枝
角出して海を見てゐる蝸牛 福知山市 奥村皐月
なるようになりし夏帯畳みけり 防府市 山根節子
祭笛神の背丈のみな違ふ 小田原市 山岸秋光
紙袋紙の音して夏の風邪 国立市 長内道子
どんな子になるかぶらんこ押してやる 豊橋市 山本冴子
国境を越えても蝶は撃たれない 三原市 高尾育樹
八月やみんな一緒に目をつむり 東京都 清水弥生
十薬はも少し生きるために干す 秋田県 須田喜代子
花冷や突き立ててある畳針 石川県 中川順友
父の日やちちを忘れし母と居る 防府市 岩城克枝
枝豆をきれいに茹でて悼むなり 多摩市 平山道子
たたかれて西瓜だんだん考える 狭山市 縣 康子
手花火へ父が闇より加はりぬ さいたま市 茂木和子
花火師のかがみ走りの速さかな 川崎市 柏木喜美恵
たけのこ飯大さな声のドイツ人 稲城市 田中幹雄
落城の絵巻のごとく菊を焚く さいたま市 前田虹雨
レコードに飛ぶ箇所のある寺山忌 北九州市 徳永紀美子
まつさをな階段を吐く海鼠かな 広島県 境 未池子
道をしへ二度ほど飛んで父の墓 足利市 久保田豊秋
十二月八日の白い炊飯器 大和高田市 島谷全紀
かげろうの産み落としたる赤ん妨 京都市 喜多陶子
炎天へたましひ先に出でゆけり さいたま市 西村華陽
飛んでるとは誰も知らないかたつむり 鹿児島県 愛甲敬子
麦秋やまばたくと子が消えてゆく 福島市 佐藤弘子
先生に叱られている羽抜鶏 狭山市 前田美智子
疲れたる桜と背中あはせけり 鳥取市 矢部道男
まだ空へのぽる途中の凌霄花 柏市 希田沙知子
父の粥ほあっと白花さるすべり 松戸市 田口満代子
手の蝉を鳴かせて出てくるかくれんぼ 奈良市 千村邑香
憲法九条蝉という字は弾に似て 北九州市 武藤不二彦
ホームヘルパー残りの時間水を打つ 指宿市 上高原ひ郎
私語のように関東平野芽吹きだす 東京都 桜木美保子
青梅のなかに目玉が干してある 松江市 田川ひろし
一人ずつ消えて鬼灯残りけり 柳井市 好村文子
蚊を叩く掌大き過ぎまいか 吉川市 樽谷俊彦
ただようておりくず切を噛んでおり 東京都 富田敏子
くちなはに逢ひしと女艶めきぬ 八王子市 芹沢 保
大空は淋しき穴ぞ白牡丹 宇治市 村上文彦
父の日は父のやさしく毀れる日 伊勢崎市 斎藤一平
菖蒲園どこから見ても真正面 香芝市 西山大之進
白鳥来一枚の皿拭き終り 龍ヶ崎市 鷹羽龍麿
サハリンも戦いも遠く昆布干す 飯田市 小林良子
幾度か父を憎みし墓洗ふ 総杜市 尾関当補
いいことはなにもなかった日の金魚 横浜市 鹿又英一
退屈な系図の端の烏瓜 流山市 足立魚水
梟は硫黄の匂いしていたり 市原市 植原安治
ほんとうは眠つてをらぬ浮寢鳥 大阪市 北川正博
狂いだしそうな桃から剥いてやる 東京都 富田敏子
切なさのあとかたもない葱の白 習志野市 横須賀洋子
枇杷熟れて相続人が立っている 豊橋市 山本冴子
足跡の幸せさうな雪の原 桶川市 田口 武
あとがきを考えている桜かな 横浜市 大橋一青
人間の肉のさびしさ落椿 武蔵野市 望月哲土
水は水色空は空色沖縄忌 山形県 柏倉ただを
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