出版物

現代俳句協会新鋭シリーズ

句集『揮発』 新鋭シリーズ・5

柏柳明子 著

(定価1,500円(税込) 2015年9月刊)
 
 柏柳明子さんの句稿に目を通していたら、高村光太郎の詩「道程」が
ごく自然に口をついて出てきた。明子さんの家庭環境も、俳句をつくる
べくしてつくる、そういう日常にあったらしい。彼女の中の俳句の五七五
のリズムが、DNAとして浸透していったのだろう。俳句の道が、彼女の
後ろに、ごく自然にひらけていったのではないかと思う。  ──石 寒太 
 
  自選十句
初夢の続きのやうな道のあり
ふらここやいきなり君が好きになる
ヒヤシンス潜水艦の設計図
緋のダリアジャズシンガーの揮発する
銀河系ピアノのペダル踏む素足
生ビール輝きながら来たりけり
好きなものいふとき小声吾亦紅
烏瓜ぱちんと心療内科かな
終業の冷たき靴へ履きかへる
大寒や横向いてゐる人体図
句集『犬の眉』 新鋭シリーズ・4

岡田由季

(定価1,500円(税込) 2014年7月刊)
 
もし俳句をつくっていなかったら、
当然に見過ごしてしまっていたに違いないような
事柄・瞬間・感触・感動などのひとつひとつが、
岡田由季という俳句作家の眼を通して、
俳句という形に見事に顕れている。
そこに彼女の独自性がある。   ――――石 寒太
 
 
そら豆や楽しく終はるずる休み
間取図のコピーのコピー小鳥来る
遠足の別々にゐる双子かな
花水木荷物と別に来る手紙
犬の眉生まれてきたるクリスマス
どのボタン押しても開く初御空
青鮫の来るほどシンク磨きけり
帚木の好きな大きさまで育つ
ひとりだけ言葉の違ふ茄子の紺
空蟬を集めすぎたる家族かな
句集『ユリウス』 新鋭シリーズ・3

佐々木貴子

(定価1,500円(税込) 2013年11月刊)
 
 

著者の葛藤と否定精神

 肯定精神が目まぐるしく錯綜し

 作者の最も秀れた映像感覚は

 この句集全句に共通している

 
バラ咲いてひどく自由な昼下り
夏の都へ拝啓冬の国より恋
紫陽花の半陰陽が海の丘
脳みその北半球へ冷やっこ
天泣や土偶の洞が火(ホ)と叫ぶ
口笛の終は風なり冬の駅
風船の男をぷっと刺す師走
百億の雪やたちまち青に帰す
ぼろぼろと雪が剝がれて鉄の空
あたしⅩあなたY軸春疾風
句集『鳥飛ぶ仕組み』新鋭シリーズ・2

宮本佳世乃

(定価1,500円(税込) 2012年12月刊)
彼女にとっての俳句とは、いったい何なのだろうか。触れることの出来ないものに必死に手を伸ばし、それをつかもうとする・・・。その手段のひとつとして俳句があるように思われる。彼女は「俳句をつくっている時間は、どこか別の場所に行っているように心地よいのだ」という。本当にはじめて会った時に直感した通りの、まさに“俳句人間”なのである。     (石寒太)
 
はつ雪や紙をさはつたまま眠る
ふゆざくら山のうしろのとんびの巣
あわゆきのほどける音やNHK
まもなく三鷹曇り空のうぐひす
若葉風らららバランス飲料水
ひまはりのこはいところを切り捨てる
鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに
泉泣きながら釦だらけの谷
土曜日が終はらぬやうに踊りけり
生きてゐるからだのあまり葛の花