各賞紹介

宇井 十間(うい・とげん)


  • 1969年生まれ アメリカ在住
  • 東京大学医学部卒業、医師(現在、研究渡米中)
  • 1988年 東大俳句会
  • 2001年 「吟遊」参加(その後退会)
  • 2006年 第26回現代俳句評論賞を受賞
  • 現在、「海程」「豈」「小熊座」に所属
  • 現代俳句協会会員
  • 世界俳句協会(WHA)創立時会員
 
「千年紀」    宇井十間

風船いくつ地には不在のもの多し
砂の上に足跡とだえ夏の雲
泳ぎおえ遥か異国の神話かな
南欧の水の駅にも風ひかる
そらのはて遠くしずかに瀑布ある
お花畑やがて奈落へつづきけり
水澄むや秋の使いの跡きゆる
泉へのあゆみみえざるものの脱衣
草いきれ少年の日の入日かな
朝顔の白あざやかに島の恋
地図になき村しんかんと穀雨かな
ひぐらしや遠い世界に泉湧く
(やしき)高原の花とりどりに
鷹自在大なる影にあらがうや
りんどうの露のひとつぶ水の星
青やんま水の国には水の精
落葉やみしばらくそらにさざなみある
しんかんとしてプールには影ひとつ
千年後の廃墟にしばし鳥の恋
啄木鳥や月皎々と青き森
黄落のなか中世の塔の街
小鳥くる秋耕のわが休むたび
夏の星岩はだ荒きゴビ砂漠
ヨットの帆原色ばかりみえる海
ガラパゴス諸島しずかに水ぬるむ
春潮やいまきえていく種もある
蜥蜴のみみえ沈黙の地球かな
野火やがて身のうちにある暗さかな
冬の星神々の棲む峰白く
耕すや虚無を育てているごとく

※受賞者略歴は掲載時点のものです。