各賞紹介

金原 まさ子(特別賞)(きんばら・まさこ)


・明治44年(1911年)2月5日東京生まれ。
・昭和45年(1970年)「草苑」(桂信子主宰)創刊に参加。
・昭和48年(1973年)草苑しろがね賞受賞。
・昭和54年(1979年)草苑賞受賞。
・平成13年(2001年)「街」(今井聖主宰)同人。
・平成19年(2007年)「らん」(発行人、鳴戸奈菜)同人。
・平成29年(2017年)6月27日歿。

・句集に、『冬の花』『弾語り』『遊戯の家』『カルナヴァル』。
 著書に、『あら、もう102歳』。

 

 
 
金原まさ子  『カルナヴァル』 自選五十句

  ああ暗い煮詰まっているぎゅうとねぎ
  やわらかな雪降っている魂(たま)揉みや
  ひな寿司の具に初蝶がまぜてある
  目かくしの土竜の指の花の香よ
  ヒトはケモノと菫は菫同士契れ
  猿のように抱かれ干しいちじくを欲る
  身めぐりを雪だか蝶だか日暮まで
  よもつひらさか花合歓は無口の木
  月光の茗荷の花となり騒ぐ
  フライパン重なり鵙の贄(にえ)増えた
  衆道や酢味の淡くて酢海鼠の
  雪が降る海鼠に靨(えくぼ)ちらちらちら
  世の終り田螺わらうときにっと
  雲の峯まっしろ食われセバスチャン
  ぷいと来てバラを接木して去りぬ
  どしゃ降りや身ぐるみ脱いで白百合は
  エスカルゴ三匹食べて三匹嘔く
  百万回死にたし生きたし石榴食う
  青大将箪笥の前で臈(ろう)たけぬ
  蟇またぐときごうごうと耳鳴りが
  虎に蹤(つ)きすっと曲れば神隠し
  筥(はこ)いっぱいの櫛焼く父よ秋の昼
  山羊の匂いの白い毛布のような性
  月夜茸へ体温の雨がどしゃぶり
  琴墜ちてくる秋天をくらりくらり
  時間切れです声を殺してとりかぶと
  にこごりは両性具有とよ他言すな
  冬バラ咥えホウキに乗って翔びまわれ
  中位のたましいだから中の鰻重
  牡丹へふたりの神父近づき来
  鬼百合は父かもしれぬ蕊(しべ)を剪(き)る
  十一月孔雀の首が日まみれよ
  わが足のああ堪えがたき美味われは蛸
  刑罰よからすうりの花月ざらし
  芹に気をつけよ幻聴がついてくる
  深夜椿の声して二時間死に放題
  ハルポ可愛や生まれるときのウコン色
  鶏頭たち深い話をしておるか
  白磁に盛るひかりごけのサラダとさじ
  聞えない耳なら石榴ぶらさげよ
  月光やおのれとあそび藤たちは
  別々の夢見て貝柱と貝は
  流転注意そこは土筆のたまり場よ
  父と流れて母と淀みて紅葉鮒
  水が上って白菜が浮く石棺ごと
  炎昼のかちっと嵌り死と鍵と
  練羊羹まぶた重たく食べ了る
  片腕の馭者をあらそい日と月よ
  ああみんなわかものなのだ天の川
  蠟燭の火が近づくよ秋のくれ
 

 
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。