各賞紹介

大牧 広(おおまき・ひろし)


昭和6年(1931)東京(旧荏原区)生まれ。

俳歴
  • 昭和40年(1965) 「馬酔木」「鶴」に入会。
  • 昭和45年(1970) 「沖」入会、能村登四郎・林 翔に師事。
  • 昭和47年(1972) 沖新人賞受賞。
  • 昭和58年(1983) 沖賞受賞。
  • 平成元年(1989) 4月「港」を創刊、主宰。

・著書 句集に『父寂び』『某日』『午後』『昭和一桁』『風の突堤』等。
    評論等に『能村登四郎の世界』『いのちうれしき』『海』『港』等。
    他に、『大牧広集』『自解150句選』および解説集など。

「第64回現代俳句協会賞受賞作」    大牧 広

落日に橋つつまれし空襲忌
恋猫の神を無視してやまぬなり
老人に聞こえるらしき蝌蚪のこゑ
甚平の写真のうしろ暗かりし
踏台に乗らねば出せぬ夏帽子
桐咲くや小学唱歌は神の曲
落人の里の苗木と言へば買ふ
秋耕すアジアの貧しき地より来て
蓑虫の前生はきつと狙撃兵
曼珠沙華在来線のために咲く
いくらかは湯ざめ兆して誓子論
日本の勝つてゐし頃炭いぶり
寒林に潮騒とどく生きてやる
聖五月終刊号のまたもかな
人生はときどき喜劇花嵐
元勲も石になりゐて鳥帰る
ああ弥生ばらまかれたる焼夷弾
野遊びの究極モンゴルかもしれぬ
青年の主治医なりけり五月憂し
青葉潮砲台はもう火を噴かず
海大きすぎてサングラス外す
盆休み海は黙つて波つくり
母が父を語りしときの遠花火
七月や河馬のごとくに仕事の量
末枯や遺影の父の丸眼鏡
花野より赤字空港が見ゆる
冬支度して今生の白い飯
蝗食べしは六十余年前朦朧
恬淡を装ひてゐし蓑虫よ
煮えきらぬ性の海鼠を見てゐたり
畦道を歩きたくなる冬帽子
凍蝶となるまで生きることの意味
岬にて颯爽と風邪ひきにけり
冬霞にしづみし外資系東京
抽斗にいのちの薬混みて冬
すこし崩れて王道の冬帽子
ときどきは海に目をやり鯨鍋
洞窟に似し一流の毛皮店
待春や洗はれてゐし信号機
初午やはたと閉ざせし鮮魚店
ストーブのあかあか世界大不況
春寒くキリストの目となりにけり
日本海二日見てきしかざぐるま
後期高齢者の海色のサングラス
望郷の高さに掲げ捕虫網
ヨットレースの海にねむりし特攻機
草市のかさりかさりと売れてゐし
盆休み運河が急に現はれし
里芋の煮ころがしこそ一哲理
大花野一輌電車天より来

受賞の句は現代俳句データベースに収録されています。
 
※受賞者略歴は掲載時点のものです。