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第69回現代俳句協会賞は安西篤氏、特別賞は金原まさ子氏に決定

顕彰部 (2014年10月06日掲載)
 当協会は9月27日(土)協会事務所に於いて、第69回現代俳句協会賞の選考委員会を開催し、
以下のとおり決定しました。
 なお、特別賞は従来の佳作や次席と異なり、受賞と同様の扱いで現代俳句全国大会の席上で表彰されます。

◇第69回現代俳句協会賞     安西 篤 (あんざい・あつし)『秋のタオ』  
     〃     特別賞  金原まさ子(きんばら・まさこ)『カルナヴァル』



安西 篤 『秋のタオ』 自選五十句


  春霞猫がひきずる寝巻紐
  沈黙の直球が来る桜闇
  火蛾舞うや醜の御楯という言葉
  蟇轢かれやがていつもの土となる
  打ち水やちょっとそこまで逝きし人
  憲法九条座敷に椿象(かめむし)いる気配
  女郎花もう死ぬといいまだ死なぬ
  秋の道(タオ)百をかぞえる間に暮れる
  色即是空紅葉の景をはみ出して
  かもめ来よ餌づけはキスの素早さで
  人日のあたまの下に在るからだ
  犬猫(ポチタマ)の芸めでたしや寿(いのちなが)
  創(はじめ)にことばそしてはじまる初景色
  陽炎や鳥獣戯画の端に人
  語り部にもの忘れあり桜東風
  雌ねじから弛みはじめし春の家
  アリランは梳る唄榛の花
  雨上がる万緑連立方程式
  補聴器のノイズに玉音紛れ込む
  ばらばらにかたまっている老いの秋
  あの世まで煤逃げし人喚ばうなり
  酢海鼠に水漬く屍の味がある
  水やれば草むすかばね匂いけり
  下駄箱がむらむらとあるみどりの日
  玉あじさいガーゼの匂う姉でした
  軽袗(かるさん)のように八十路の旅ごころ
  竹節虫(ななふし)やト書のように父がいる
  草原に反歌の座あり吾亦紅
  酔いざめの水を花鳥とおもいけり
  両神は高みむすびや鳥の恋
  地下鉄に熱風が来る沖縄忌
  原子炉に生ゴミのある雨月かな
  登高やみんな似てくる素老人
  淋しさに大きさのない秋の暮
  人間に蒸発の音山眠る
  春の砂丘男の影が折れている
  頑なに木瘤は朽ちず昭和の日
  万緑やわれら自由な粗大ゴミ
  空き瓶の透明サウンドレノンの忌
  冬薔薇その旋律のまま凍てし
  戦後とは次の戦前多喜二の忌
  パンジーの光あつめて祈るなり
  菜の花やはや水性の風にのる
  感情が液状化する弥生尽
  亀鳴くや地動説身にしみました
  みちのくの夜は二万の海ほたる
  瓦礫より音声菩薩雁渡し
  垂直に人の死の来る寒夕焼
  天狼星(シリウス)や兜太どっこい生きている
  米を磨ぐ男は海を還らざり

  ※10/6、「?」を「高」に改めました。



金原まさ子  『カルナヴァル』 自選五十句

  ああ暗い煮詰まっているぎゅうとねぎ
  やわらかな雪降っている魂(たま)揉みや
  ひな寿司の具に初蝶がまぜてある
  目かくしの土竜の指の花の香よ
  ヒトはケモノと菫は菫同士契れ
  猿のように抱かれ干しいちじくを欲る
  身めぐりを雪だか蝶だか日暮まで
  よもつひらさか花合歓は無口の木
  月光の茗荷の花となり騒ぐ
  フライパン重なり鵙の贄(にえ)増えた
  衆道や酢味の淡くて酢海鼠の
  雪が降る海鼠に靨(えくぼ)ちらちらちら
  世の終り田螺わらうときにっと
  雲の峯まっしろ食われセバスチャン
  ぷいと来てバラを接木して去りぬ
  どしゃ降りや身ぐるみ脱いで白百合は
  エスカルゴ三匹食べて三匹嘔く
  百万回死にたし生きたし石榴食う
  青大将箪笥の前で臈(ろう)たけぬ
  蟇またぐときごうごうと耳鳴りが
  虎に蹤(つ)きすっと曲れば神隠し
  筥(はこ)いっぱいの櫛焼く父よ秋の昼
  山羊の匂いの白い毛布のような性
  月夜茸へ体温の雨がどしゃぶり
  琴墜ちてくる秋天をくらりくらり
  時間切れです声を殺してとりかぶと
  にこごりは両性具有とよ他言すな
  冬バラ咥えホウキに乗って翔びまわれ
  中位のたましいだから中の鰻重
  牡丹へふたりの神父近づき来
  鬼百合は父かもしれぬ蕊(しべ)を剪(き)る
  十一月孔雀の首が日まみれよ
  わが足のああ堪えがたき美味われは蛸
  刑罰よからすうりの花月ざらし
  芹に気をつけよ幻聴がついてくる
  深夜椿の声して二時間死に放題
  ハルポ可愛や生まれるときのウコン色
  鶏頭たち深い話をしておるか
  白磁に盛るひかりごけのサラダとさじ
  聞えない耳なら石榴ぶらさげよ
  月光やおのれとあそび藤たちは
  別々の夢見て貝柱と貝は
  流転注意そこは土筆のたまり場よ
  父と流れて母と淀みて紅葉鮒
  水が上って白菜が浮く石棺ごと
  炎昼のかちっと嵌り死と鍵と
  練羊羹まぶた重たく食べ了る
  片腕の馭者をあらそい日と月よ
  ああみんなわかものなのだ天の川
  蠟燭の火が近づくよ秋のくれ



句は現代俳句データベースに収録されています。


◇受賞者のプロフィール
◇安西 篤(あんざい・あつし)、本名 安齋篤史。
・昭和 7年(1932年)4月14日三重県生まれ(82歳)。
・昭和32年(1957年)
職場の先輩、見学玄・船戸竹雄両氏の知遇を得て梅田桑孤氏編集の「胴」同人となる。
・昭和37年(1962年)「海程」入会、金子兜太に師事。
・昭和59年(1984年)より昭和62年(1987年)まで「海程」編集長。
・平成 3年(1991年)海程賞。
・句集に、『多摩蘭坂』『秋情(あきごころ)』『秋の道(タオ)』など。
 著書に『秀句の条件』『金子兜太』、共著に『現代の俳人101』など。
・現在、現代俳句協会副会長、海程会会長。

◇金原まさ子(きんばら・まさこ)
・明治44年(1911年)2月5日東京生まれ(103歳)。
・昭和45年(1970年)「草苑」(桂信子主宰)創刊に参加。
・昭和48年(1973年)草苑しろがね賞受賞。
・昭和54年(1979年)草苑賞受賞。
・平成13年(2001年)「街」(今井聖主宰)同人。
・平成19年(2007年)「らん」(発行人、鳴戸奈菜)同人。
・句集に、『冬の花』『弾語り』『遊戯の家』『カルナヴァル』。
 著書に、『あら、もう102歳』。
・現在、現代俳句協会会員。


○選考委員氏名(五十音順)
大牧 広、桑原三郎、武田伸一、遠山陽子、前田 弘。(小檜山繁子、竹本健司、両氏は欠席のため書面推薦)

○表彰式
平成26年10月25日(土)午後1時より名古屋市「愛知県産業労働センター、ウインクあいち」にて開催の
第51回現代俳句全国大会席上にて。

*お問い合わせ 現代俳句協会事務局  電話03?3839?8190