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第33回現代俳句新人賞は瀬戸優理子氏、山岸 由佳氏

顕彰部 (2015年8月26日掲載)
当協会は、8月8日(土)協会事務所において第33回現代俳句新人賞(30句)の選考委員会を開催し、以下のとおり決定しました。

第33回現代俳句新人賞  瀬戸優理子 「微熱」

    〃       山岸 由佳 「仮想空間」



 微熱      瀬戸優理子

夏空や画用紙の端反り返る

夏シャツの乳房で伸ばす畳み皺

夫は他人顔の半分サングラス

一族にはみ出さず居る夏座敷

じんわりと染み込む叱言氷水

昼寝の象鼻長くなる夢を見る

網戸抜け荒地を抜けて転生す

微熱持つ寂しさ蛍袋かな

それぞれの門をくぐりて夏の果

冬瓜の透きとおるまで夫忘る

秋茄子を割れば放心の白さ

鳴ると思う電話の鳴りぬ十三夜

晩秋のホテル氷が溶けた水

切り落とす髪の一束流れ星

雪虫の好んで止まる小さき肩

シリウスを心臓として生まれけり

産み終えて海鳴り残る冬至の湯

皿汚し愛に無口なクリスマス

日記買う同じ袋に明日のパン

覚悟とは雪の深さに沈む脚

天命を拝受ダイヤモンドダスト

地球儀を西へ廻して卒業す

改行に迷う寄せ書きいわし雲

チューリップ出てくるはずの鉢覗く

人形の肉付き密か春の宵

気を抜くと告白になる夕櫻

その男推定無罪春の雷

絶版の恋物語椿落つ

鳥引くや手錠のように腕時計

梅雨寒のポストの口に触れて去る





 仮想空間    山岸由佳

みづぎはの鳥の残像桜咲く

クロッカスあなたのことはよく知らない

葉桜のなか温めてゐる翼

昼顔のやうなまなざし本ひらく

花菖蒲川のつづきに眠りをり

日焼けして眼帯の子の打つメール

猫のこゑ完成近き虹の下

百合の花覗けば青き屍かな

電車から降り夕焼が止まらない

草に風ロープ張られてゐる泉

浜昼顔時計の針に雲流れ

七色の仮想空間消えて蟬

モザイクの小鳥のいつも九月かな

満月の浅瀬は砂を吐きつづけ

かはたれの黒猫に会ふそぞろ寒

人差しゆび木の葉の影を拾ひをり

まつしろな紙の足りない梟よ

雪ふれり振り子時計の中に父

冬木発つバスうつくしく海の底

揺れてゐる影だんだんに冬の蝶

マネキンの心臓冬の夕日差す

月光に雪の溶けゆく音を聞き

鳥帰るわたくしといふ森の奥

ピエロ立つ春の梢のゆれはじめ

雪の果観覧券を栞とす

つぎつぎと小石のやうなしやぼん玉

最果ての木々に祝はれ春の蟬

山吹やきれいな夜の待つてゐる

骨のなき魚林檎の花の窓

亀鳴くかこつちの道がおもしろい




【俳歴】
◇瀬戸優理子(せと・ゆりこ) (本名 武田優理子)
1972年東京都生まれ、北海道在住。
1997年 「橋」(のち終刊)の句会にて俳句と出会う。
現在「WA」「itak(イタック)」「蘖通信句会」に参加。
2011年 第二十九回現代俳句新人賞佳作。
2014年 第十四回中北海道現代俳句賞受賞。
現代俳句協会会員。北海道俳句協会会員。


◇山岸 由佳(やまぎし・ゆか) (本名 中嶋由佳)
1977年生まれ
2009年 「炎環」入会、石 寒太に師事
2012年 「炎環」新人賞受賞・同人、同人誌「豆の木」参加
2012年 炎環新鋭叢書シリーズ5『風』に参加
2013年 「炎環賞」受賞


◎選考委員(敬称略・五十音順)
大石雄鬼、渋川京子、田中亜美、対馬康子、照井 翠、橋本輝久、山本左門

◎表彰式
平成27年10月24日(土)午後1時より東京・上野「東天紅」にて開催の現代俳句全国大会の席上にて。

*お問い合わせ 現代俳句協会事務局 電話03-3839-8190