現代俳句コラム

知らない町の吹雪のなかは知っている佐藤文香

知らない町はわくわくするものだが、それが吹雪の真っ只中となるとまた話は別で、取り敢えず安宿でも良いから何処かに落ち着きたい。大袈裟に言うなら、知らない町で吹雪に巻き込まれると、街角で遭難という可能性も無きにしも非ず。そんな吹雪の中は知っているというのだから、つまりはこんな厳しく寂しい、冷たい孤独はとうに馴染みなんだと言っているのだ。末尾の「いる」でぶっきらぼうに切るところに痩我慢みたいなものも見えて、それはまた良い。

これは「知らない」と「知っている」の二項対立が、それぞれ「町」と「吹雪」に属しているのが見どころで、普通は「町」は「知っている」、「吹雪」は「知らない」に属するだろう。既知は安心する要素だし、未知は恐怖する要素だからだ。実際、吹雪は死という未知の要素を大いに含むものだ。ところが、それは知っている、と言う。一方で、町は知らない、と言う。もしかしたら、たとえそれが生まれ育った町であっても、作者は知らないと言うのではなかろうか。吹雪の、どの道にも人っ子一人いない、何もかも激しく真っ白で、凍る風に息も出来ない、そんな状況の方が良く知っているんだよ、と。ならば吹雪とは、町と対峙する作者そのものなのか。

 

 

「君に目があり見開かれ」所収。14p
評者: 竹岡一郎
平成29年3月16日

インターネット俳句会

大空の傾いている巣箱かな
齋藤文十郎
梅ふふむ時代のうねりくる朝
京都冬竹

インターネット俳句会「一般の部G1」高点句

得点番号俳句俳号
15100菜の花のなだれて海の青さかな風の鳥
1424職業欄余生と書いて山笑ふやち坊主
13133饒舌が寝息に変はる春炬燵六甲虎吉
13263入学の子らの名簿に仮名をふる達哉
12195家計簿の余白に記す今朝初音おりべ
12813冬麗や楷書のごとき土俵入熊谷古錐
1238雪どけの村じゆう軽うなりにけり田居遊歩
10618折鶴の首の鋭角風光る石口翼
10774春光を掬って昇る観覧車石口翼
9712野火猛るふつと戦火の夜のこと昭生

インターネット俳句会「一般の部G2」高点句

得点番号俳句俳号
12206赤い糸針に残して針供養風来子
9583明日ここを焼くと枯野に告げにゆく霞山旅
8229吾が代で絶える血縁冬銀河大石親行
6177降る雨に小顔を洗ふ土筆の子あやめ2号
638結論はもう少し先冬木の芽李子
6971円周のかけら水平線の春若林陽光
6891のどけしやよいしょよいしょと母の来る安寿
6517夕暮れを曳き連れてくる焼芋屋京都冬竹
625大仏の胎内まろし春の風汝火原マリ
5588万物に名のある不思議冬銀河藤ゆきこ
568病室の窓の向こうはいつも春藤田六伍
5461ふらここのてっぺん父を越えてゆけ
528大寒にくぐる暖簾の暖かさ羽夢
51048唇に椿の赤を置いてみる鷹子
5276白魚の中を透かして生きてをり江原遅筆