現代俳句コラム

黄金週間畢(おは)る高嶺に一墜死馬場駿吉
 今や、夏休み/年末年始と並ぶ我が国の一大イベントであるゴールデンウィーク(GW)は、他の二つの歴史的バカンスにはない爽やかな気候も加わって、我々にGWには「何を為すべきか」(否、無を為すべき…等々)という大いなる悩みをもたらしている。駿吉の句集『夢中夢』のこの句は、GWの終わりに山の頂で小型飛行機などが墜落して犠牲者が出たと告げる。いわば祝祭の高揚感が、その終焉とともに一気に急降下し燃え尽きるという対照、あるいは無常さを描いた作品と読むことができるだろう。
 美術評論家でもある駿吉の作品であると考えれば、この事件は芸術家の光と影について言及した作品とも読めるのではなかろうか。
 GWそのものは兎にも角にも足早に過ぎ去ってしまうが、人生の苦悩や輝きもどこか似ているかもしれない。たとえばこの句の作者に纏わる詩歌あるいは美術を志す場合を想像してみよう。芸術家たちはみずから道なき道を切り開き迷いながら芸術の高嶺を目指すのだが、生涯で満足のゆく作品を紡ぎ出すという頂上の夢は、困難を伴うばかりで成就しがたい類いのものであろう。その高嶺に何とか辿り着くものもあるだろうが、ここで「墜死」と表わされているように、バカンスの喜びよりも至上の美を追いかけその追求の果てに(あるいは多くは道半ばにして)、美の高みに散っていった芸術家/詩人たちを思うのである。
 同句集の中の、
  サドを隠れ讀みし罌粟畑いまは墓地   駿吉
もまた、高揚からの墜落という、もうひとつの甘美の果ての無常の景である。
評者: 木村聡雄
平成28年7月1日

インターネット俳句会

葱坊主一心不乱に泣いている
赤松   勝
夏の空みんなの鼻の穴見えて
原 英

インターネット俳句会「一般の部G1」高点句

得点番号俳句俳号
19134良妻も賢母も終へて合歓の花やち坊主
1810返す手が月に触れたる踊りかな耳目
16286睡蓮の水の余白に雲流る遠藤もとい
14190向日葵やゴワリと乾く柔道着閑人
12984不機嫌と判る扇子の使いよう鉦貞
11227断崖に果てる岬や沖縄忌せいち
989名をつけて闇に戻せし蛍かなみかん子
9161夢を見るためにひたすら繭となるぴエロ
9232夏薊少女の中の発火点優子
9980夫看つつ生き切る朝の濃紫陽花廣瀬布美
8140宴終えて孤独なパセリ噛んでみる茜薫
8801少年の海いつだつてラムネ色林流伴
8519長靴の今日の暑さを洗いけり戊三春
7958柚子の花やんはりものを言ふ女糸川草一郎
7337地球儀の太平洋の黴拭ふのぼさん
769自らを片付けてゐる端居かな耳目
73冷奴今日三角に切る気分記内カノン
7927蚊柱や少し昭和の残る路地遠藤甘梨
742ときどきは僧の代読牛蛙赤松勝
7131隣村の音だけもらふ遠花火甲賀忍者甲賀忍者
7707落暉いま肩の高さや麦の秋山嵜緑

インターネット俳句会「一般の部G2」高点句

得点番号俳句俳号
8269梅雨きざす形見の帯の結び皺大島涼波
7419水鏡置いて立ち去る驟雨かな遥夢
783まなざしの静かなる僧沙羅の花京子
7127雲を吸ひ雲を吐き出す梅雨の山亀津ひのとり
7158静脈の透く人へ差す白日傘溝口トポル
6289一人居は一人できめる夏蒲団能待人
62五月雨や片付かぬもの語り来る多事
6375紫陽花や血縁絶えし墓一基 大石親行
6753控えめに恋を語りぬ苔の花
618仄暗き駅舎の灯走り梅雨上村ふじを
63山折りと谷折りのまち夕焼けるさるぼぼ
5641月見草蝶の重さをもてあまし如雲
5301看取る目を待って牡丹の崩れ落つ霞山旅
544梅雨寒や枕の高さ定まらずみのるる
538ところてん卓に置かれて妻の留守としもり
57燕飛ぶ悩みも迷いも断つごとく吉成穀雨
5841万緑に一筆描きし土石流山友信太
5282金魚にも名前が有りて孫の部屋荒木五郎
5810あぢさゐや記憶の底のをんな文字凉木玲
486万緑を裂く刃のごとき滝ひとつ如雲
44六月の湿気組み伏せインドカレー汝火原マリ
4412三日ほど画材となりぬ堅き桃山本浪子
4398葛切や藍の暖簾の二年坂凉木玲
439父の日や丸みたる背にメジャー当て藤井寿豊
4909イノシシの話で始まる帰省かなラヂオ少年
4471でで虫の葉先に傾ぐ思案かな溝口トポル
4541すれ違ふ日傘のひとの空似かな凉木玲
4144せせらぎに風登り来て糸とんぼ瀧暁
419流星の音を聴きをる蛇苺澤田聖吾