現代俳句コラム

毬つけば男しづかに倒れけり吉村毬子
 毬子を俳号とする、吉村さんの処女句集『手毬唄』の一句である。一々数えてはいないが、「毬」あるいは「手毬唄」の句は、十指に余るはずである。「毬」に対する吉村さんの拘りは何か、いささか興味のあるところではあるが、今はそれを探る暇はない。「著者略歴」によれば、1990年池袋西武コミュニティ・カレッジ「中村苑子・現代俳句教室」を受講、俳句を始めたという。いわば中村苑子最晩年の弟子と言ってもよかろう。
 掲句は、「毬」という実体があって無きかのような措辞に対峙させて、予め予定していないところから立ち上がる詩というか、無意識の中に潜んでいる形状としては表しにくいもの。表面的には、毬をつく者に対して男が静かに倒れた、というまことに単純明快な表現ではあるが、単にそれだけではないこと、私がいうまでもない。一見明快ではあるが、然に非ず。言葉の斡旋の仕方が、従来の俳句表現とは根本的に違うのだ。天性の感覚の新しさ、作者独自の個性と言ってもいい、言語感覚の新しさに拍手を送りたい。
  毬の中で土の嗚咽を聴いてゐた
 この句も掲句と同根の範疇にある。切れがなく、散文の一行のように見えながら、具象的な表現が一句を際立たせていること、紛れもなく俳句そのものである。
 詳述するスペースはないが、現代俳句協会は、ここに同人誌「LOTUS」の若く新しい有能な作家を得たと言っても過言ではなかろう。次への進展を期待するところ大である。
 
出典:『手毬唄』平成26年7月24日 株式会社文學の森
評者: 武田伸一
平成26年9月21日

インターネット俳句会&ジュニアネット俳句会

大股で来てすぐ帰るカンカン帽  
岡本ニャオカ
寝て起きて食べて八月十五日  
蛙香

インターネット俳句会「一般の部G1」高点句

得点番号俳句俳号
141269終戦忌近道知らぬ父の靴健央介
111085絵日記をはみ出している大花火昌司
10531振つて売るガラス風鈴振りて買うMUU
10279手拍子のところだけ合ふ盆踊り菊鞠潤一
101093帰省子を方言にする母の味山田立雪
10741背番号背負はぬままに夏終る木村山階
919炎昼や腹に乗せたる妊婦の手重青
9123炎昼や引火しそうな付け睫毛石口翼
9388石一つ替えて箱庭明るうすせいち
8550秋の夜母の名あまた縫い付ける石田 麦風
8141吊革に掴まつてゐる残暑かなせいち
7653生身魂押せばまだ出る歯磨き粉三椒
7994迂闊にも歩兵の父に茄子の馬仁誠
7247心臓に手足が生えて阿波踊日田路
7963国防色てふ八月の色ありき青野草太
6768一村を洗い終りて雲の峰草紅葉
61089麦藁帽駆けて行く子の空返事咲く子
6491一坪に夫婦尻寄せ草むしり篤道
6875夏惜しむケルンに石を一つ足し菊鞠潤一
6811七夕や老いには老いの願い事田中つとむ
6349持ち替える度に重たくなる西瓜菊鞠潤一
6139ハンカチにある一日分の皺ツルキジ
696ストローに果肉が詰まる原爆忌石口翼

インターネット俳句会「一般の部G2」高点句

得点番号俳句俳号
1668背泳ぎを覚えて地球の軽くなるバンの
8248迎え火をもう少し焚き母を待つ安島寒山
6237回廊の太き柱や蝉時雨清治
630平成もきな臭くなり終戦日高林正
6647数式のごとく私語なし夏期講座澤木淳枝
6127名月やさらりと野垂れ死ぬ予定葛生淳一
688水の色草の色とも糸とんぼ森山真子
6623二円切手舐めて残暑を見舞ひけり舟三壺
5908朝顔や登りつめたる孤独かな山崎敏江
5680己が身を任す風あり赤とんぼ猪甘劉
5844目隠しをしない施設のスイカ割り三浦久
5614寝て起きて食べて八月十五日蛙香
5472炎天も余生とあらばここちよし銀次
4264柔らかき風のふくらみ竹婦人佐藤佳菜子
4155普通の日の普通のカレー原爆忌荻原甜瓜
4594老人が木像めいて炎天下文月 芯
4445河童らが使ふ近道月見草柏井青史
4837歳月を笑ひ包んで心太今村蔦
4754墓洗ふ母の背中を流すごと高宮美笹
4410端居して星座詳しき娘も母にますみ
4566すれ違う少年の俺夏帽子鈴木良二
4394癈兵の如く向日葵立ち枯れて白兎
4532踏ん切りのついたところで心太舵写洛
462逢えぬ日の金魚の息を数えおり清治
4795車椅子クリルとまわる盆踊中場源二
4579点滴の高窓に在り雲の峰わきちょう
4168蝉時雨もて一日を塗りつぶすtakato17
4306迎え火や盆会の客は姉ひとり中村青潮
4173空蝉や記憶を入れる小引き出しとしえ
4600空蝉が力のかぎり幹を抱き米鮫夢猪