■投句一覧

一般の部

1 初蝉のチューニングより始まりぬ
2 炎帝がいつも出迎へ地下出口
3 少年の志持て夏休み
4 夏大根少し涼しさ手に持ちて
5 雷の不意の到来ここ二日
6 洪水を恐れておりぬ蟻の家
7 幾百回ブナは緑の衣纏う
8 山笠走るベッドの暦は六のまま
9 病む父の部屋へ立夏の風を入る
10 羽抜鳥解放部落へ駆け込みぬ
11 四国旅俳句ポストは蝉のもの
12 歩むとき鷺は首から青田風
13 風薫る引揚げ終わりし大連港
14 枇杷たわゝ農夫の首に深き皺
15 茂る野の草となりてや人消える
16 後退りできぬものかはなめくじら
17 手に掬う一夜に果てし金魚かな
18 おかわりの冷酒の試飲モーツアルト
19 椋鳥の立ち寄る青き水溜まり
20 オホーツクの無敵の気圧寒皐月
21 騒音やネオン遥かにあとずさり
22 暗闇の呼吸してゐる門火かな
23 四方の窓開けてごろりと夏来たる
24 石榴咲く羽あるものを皆呼んで
25 盆東風や舫ふ船べり父母の声
26 冷たさに手を入れてみむ岩清水
27 子蟷螂芝より跳ねて芝の色
28 砂日傘のび太スネ夫の笑ひ声
29 初めてのブラジャー眩し捩り花
30 明易し雨戸を閉めてもう一度
31 向日葵の百万本の迷路かな
32 ラムネ瓶覗けばはるかな海の色
33 三本の忘れ傘あり梅雨夕焼
34 源平の争い未だ蛍かな
35 背番号無き子等の夏早や終わる
36 犬猫も 毛皮脱ぎたい 熱中日
37 語るより聞き手にまはり夏料理
38 梅雨空や不定愁訴に悩まされ
39 炎天や紙芝居屋の大背中
40 英雄伝睡魔に克てぬハンモツク
41 道に咲く梅雨のネオンに惑はさる
42 秋の星ただしんしんとしんしんと
43 近ずけば藻の花ゆれて魚をせわし
44 登って登って夏雲を突き抜ける
45 夏木立天狗も遊ぶ鞍馬山
46 剥き出せば痛いと泣いて桜の実
47 療養のカッコー遠く もやの中
48 逡巡を背後より責め扇風機
49 木洩れ日の途切れる辺り泣羅漢
50 夏期講座XYの交はれリ
51 山百合は燃える塵の日に出して
52 ドミンゴや今日梅雨明けの報あり
53 白百合を活けたる場所を告げられず
54 梅雨燕大地すれすれ餌をつかむ
55 梅雨晴間鳥鳴く杜の暗さかな
56 向日葵や地球の重さ持ち上げて
57 思ひ出を見ているやうな揚花火
58 クレヨンが放り出されて梅雨明ける
59 梅干してたびたび日差し裏返す
60 鋳物師の塩浮くシャツや夕涼み
61 すもも食み少し心の痛むこと
62 十薬の雨飛んで来るカンツオ−ネ
63 つばくろの低く飛びける棚田かな
64 夏風邪や天麩羅梅干しウナギ犬
65 蛍とは硬き虫なり籠の音
66 縁側に釣具散らかる梅雨深し
67 やまんばや地を這う草に蹴躓く
68 西瓜わり わがGPS 頼りなし
69 夏服の胸に貝殻揺れにけり
70 人魂を見たと言ふ子や芋殻焚く
71 蒼天を濡れ身に沈め心天
72 走り根に子らの白靴干されをり
73 汗光る坊主頭が水を呑む
74 クラス会浴衣崩れて宴おわる
75 虹双子高層ビルをもたげおり
76 純白はいずれとも合ふ濃紫陽花
77 湯上がりの父の背広き夕端居
78 青虫に降る訳問うて一休み
79 大空の景色が変わり竹の秋
80 蝉時雨まだ命ある乾電池
81 雷に顔のゆがみて孫ふたり
82 豪族の石棺出土青芒
83 椋鳥の脚が出ている菖蒲園
84 新緑の恋の季節やしじゅうから
85 夕虹を追ふ追ふ鋏花鋏
86 関心があるかないかや鴎外忌
87 兄の後追いておてんば捕虫網
88 体操に第一第二夏休み
89 ほどほどに汗掻き布衣の庭掃除
90 曇り空プール開きに人まばら
91 雲の峰仰ぎて終える墓参り
92 大銀杏しゃくり上げたる名古屋場所
93 蛞蝓の徘徊しかと銀の道
94 夏富士を近くに寄せて療養す
95 算数は答えが一つ枇杷に鳥
96 梅雨晴れ間唱歌漏れくる養老院
97 人生もあっという間の花火かな
98 ここ久しく茅輪潜らず夏となる
99 逡巡も後退もあり蜷の道
100 梅雨晴れて日を存分に花も葉も
101 吉野家の牛で乗り切る土用かな
102 小流れのトマト戊辰の刀傷
103 上り鮎上る先々刺客待つ
104 どこで切ろうか炎天の円周率
105 何もせぬうちに十年 夕端居
106 町ぐるみラヂオ体操バラの園
107 もうすぐビヤガーデンね 誰かの声
108 暑気払い午後4時といふ半端刻
109 梅雨空を後ろ蹴りして北海道
110 陰日向なくどこまでも蟻の列
111 神妙に茅の輪潜れりハイヒール
112 緑蔭に男の寄ればへぼ将棋
113 すれ違ふミュールに仄(ほの)とプールの香
114 夕焼けに湯上りの顔染めにけり
115 ねじり花風も捩れて通りけり
116 白面のどこをつつこか冷奴
117 炎帝やオフィスの街を掘る男
118 指先の迷う釦や七変化
119 母遠く 仏壇に添う トマト2個
120 シャカシャカと洩れ出るリズム電車梅雨
121 千切れ雲懐かしきかな草の笛
122 雨音に祇園囃子や炎暑待つ
123 声嗄らし手揉み忙しきほおずき屋
124 あっぷっと不亮岩塩西瓜など
125 犬の眼に水平線や青林檎
126 鳴き止みてよしきり鳴くを覚えけり
127 髪結いて素直なるかな蛇苺
128 直角に親指立てて夏蜜柑
129 彩色の夢を紡いで蜻蛉玉
130 萍や水蜘蛛忍ぶ濠の闇
131 猛獣の慰霊の碑なり木下闇
132 金盥金魚の浮世反射して
133 風鈴のそよ風拾う音色かな
134 雪解水ひとり掬えば皆掬う
135 立葵すっくとすくと背比べ
136 法要の 読経に伴奏 雨蛙
137 その先は天国という梅雨の月
138 迅雷や曼陀羅時空こだまなす  東寺にて
139 花のように 実の成る成る トマト鉢
140 風鈴をゴムデッポウで狙い撃つ
141 薄曇夏日とうて下り雨
142 はすの葉に美玉残して通り雨
143 汗匂ふミッキーマウス握手攻め
144 海鳴りの閉じ込めらるるソーダ水
145 蛍火の笹葉に消えて星祭
146 海開き太平洋に御幣振る
147 日時計の影追い越してかたつむり
148 傘はじく 雨音絶えて 梅雨終わる
149 垂れてくる松井の福耳油照
150 相伴は夫に届きしメロンかな
151 はかなしやうすもの鎧ひ彷徨ひぬ
152 一叢の 桃源郷か 夾竹桃
153 サーファーの時には消える土用波
154 黄揚羽谷川に出て黄勝る
155 風鈴の短冊重し月に傘
156 夕焼を吐き出しきつて海静寂
157 夏の湖向日岸なる師の句碑に
158 ねぢ花や言はずもがなの言葉憂し
159 泥んこの体験学習田を植うる
160 八卦見の言ふだけ言ふて古扇
161 かまどまで水入れ運び夏帽子
162 蝉時雨集中の静弦引けり
163 雨あがり茅の輪くぐりの老夫婦
164 落ちてなお蟻に蜜やる凌霄花
165 一本の鬚剃り残し麦酒乾す
166 盆踊り大地の記憶よみがえる
167 ボランティア入れて棚田を植え終わる
168 桟橋や海を見ている夏帽子
169 ベランダの胡瓜2本で枯れ仕舞い
170 青い空と白波の立つ海を遠望
171 夏草を刈り進みけり一筋に
172 雲の峰昼はカレーにしようかな
173 蚊火煙る言葉なくとも二人かな
174 雨音の仲裁なりて明け宣言
175 扇風機回るまんまに誰もいず
176 軒燕旅立ち間近声太し
177 夏の衣のクールビズとてきな臭く
178 梅雨きのこ議論尽きざる日本海
179 ずずずいと炎帝様のお通りだ
180 青田波子つむじ二つ戯れる
181 梅雨明けの太陽のごとフラメンコ
182 松根に二本の注射日の盛り
183 スルーパス駆け抜けた夏移民の子
184 老病に陥る夏の夕べかな
185 黒きこと麦の黒穂の黒き粉
186 かぶと虫こども運賃赤表示
187 織姫に呼び止めらるる眩暈かな
188 面影を追ひつづけるや羽抜鶏
189 手植え田は我が故郷ぞ蝌蚪の列
190 生々流転とも蟻とあり地獄
191 お下がりの浴衣の似合ふ子に育ち
192 青梅雨や方程式が解けました
193 噴水の有頂天といふ高さかな
194 獣の目茂みに光る夕端居
195 磨かれて木目涼しき厠の戸
196 がらくたをまたしまひこむ戻り梅雨
197 居酒屋の女将母似し夏のれん
198 新調の釣具を磨くバルコニー
199 大西日蹴ってみたくて海に出る
200 薪能闇がそだてる篝かな
201 花嫁は上州生まれ麦の秋
202 日盛の回送車よりタンゴかな
203 ぽくぽくと念仏進む西瓜など
204 秘密めくふたりの時間 蚊帳の中
205 笑い声他愛なきこと梅雨湿り
206 夫となる人の手に触る花火の夜
207 大庇読経振りまく扇風機
208 町中が青年となる夏祭り
209 老いてなほねぎ(禰宜)は大声夏祓
210 かき氷り前頭葉を刺激する
211 止め刺す言葉隠して額紫陽花
212 踊り食い 遠くにコンチキ 舌鼓
213 名の由来昔をしのぶ蛍橋
214 野仏と考えてみるこの暑さ
215 横顔に若き日の妻夕焼雲
216 大花火こころの箍がフッ飛びぬ
217 舞姫の集いておるよなアジサイ花
218 颯爽と歩くや妻の夏帽子
219 雨垂れの連符で目覚めひばりの忌
220 さきたまの夏野まぶしき古墳かな
221 遠花火見てゐる背中見てをりぬ
222 自慢げになんにもいらぬと冷や奴
223 阿波と言う踊りの記憶笛太鼓
224 片陰に覆い尽くせぬ嘘をつき
225 観自在菩薩の裾に蟻の道
226 冒険譚読み終えし目に大西日
227 一服の帽子にとまる蜻蛉かな
228 新鮮なジュラ紀生れが掘りだされ
229 風鈴の青銅の魚風のぼり
230 鍾乳洞抜けて広がる夏野かな
231 振り向けば夏の狂気が直ぐ後ろ
232 夏草に立小便の匂いかな
233 虎が雨取れて薄日の苔雫
234 たちまちに萎める紫蘇の皺を伸す
235 停滞を打ち砕く一揆夏の夜の夢
236 燃えたぎる外国の血を入れてこそ
237 盆帰省古書に栞の未だ有り
238 大海の雨色づきし濃紫陽花
239 空港の日本地図にて梅雨と知る
240 炎帝の御到来なり積乱雲
241 錦帯橋沈む日傘と浮く日傘
242 炎天に挑む前方後円墳
243 片陰を拾いつつゆく乳母車
244 メロンパン一夏化けるスイカパン
245 梅雨明けの肚決めかねて天荒れる
246 弾かれて南天の花咲きにけり
247 5. 雨が降り石塔の上蛙聽く
248 白シャツに色を映して西芳寺
249 傘の柄のしの字逆さま梅雨晴れ間
250 青年の渋さ大好き青りんご
251 かき氷匙の探検始まりぬ
252 とりたてて何事もなく 夏半ば
253 捻り花ふうつと吹いてみたきかな
254 初蝉を喜びあえる余生かな
255 ビール酌む磐梯山を窓に置き
256 誘惑に載せられやすし蛇苺
257 草茂る土台崩れし石の墓
258 緑陰や本堂にいます阿弥陀佛
259 夕風に蛍袋の鳴るごとし
260 トラクター麦のみこみて行き佐賀平野
261 呉服屋の広き間口や夏暖簾
262 白蓮や手品のごとく現われし
263 横風の顔とか西瓜打打打打打
264 微熱あり出窓に移す卓の百合
265 峰雲に突込んでゆく観覧車
266 一木の散らす広さや百日紅
267 今日暮れて明日は明日蚊やり香
268 たいていは人たいていは女たいてい夏
269 藁馬に赤いリボンの盆迎え
270 実梅落つ黄金色して一期果つ
271 病院にはあじさいの藍が良く似合う
272 巨匠逝くバッハのアリア聴く芒種
273 西域の 風のたよりか 合歓の花
274 夏館ダリの時計が二時を打つ
275 鳳仙花虐げられし者の歌
276 朝採りの胡瓜荷籠にてんでんに
277 伝説の乙女の像に梅雨深し
278 晴れ男幹事の自慢梅雨ゴルフ
279 細腕に余る高波あめんぼう
280 梅雨ごもり奥の細道文字で追ふ
281 存分に遊びて眠る汗まみれ
282 スカートの裾ひらひらと夏の蝶
283 昼寝覚め忘れた振りを通しけり
284 雨季晴れや天(そら)をも流すメコン川
285 母の日や言い出す前に元気かと
286 光源氏今に伝えし葵咲く
287 歳重ね団扇の風のやうな夫
288 冷し酒阿る過去を断ち切って
289 ゆだち風笑みたるこけし文鎮に
290 咲き過ぎて 重き紫陽花 路地ふさぐ
291 虫干会兵糧攻めの城ありて
292 噴井口より礫層のかけらかな
293 少し脈見えて余裕や夏祓
294 路地裏や見飽きぬ猫のこもん花
295 熱帯夜都市が狂気を孕み出す
296 ケータイに目をやり潜る茅の輪かな
297 海の日の海に降る雨海の色
298 段々の田毎に蜻蛉群れ飛べり
299 鉄砲ゆり六文銭の城の址 
300 髪切りてややすっきりと梅雨晴れ間
301 どの空も夕立らしき軒すずめ
302 炎天や時折唸る変電所
303 片陰にアグラ姿の女子高生
304 頬染めて際までかじる西瓜好き
305 つんつるの浴衣お可笑しき赤毛かな
306 日蓮像立正安国梅雨の中
307 袋掛高き脚立へ妻立たせ
308 梅雨空のクリックしたき隙間かな
309 潮の香に髪のしめりや雲の峰
310 ガキ大将ホントは苦手オニヤンマ
311 万緑の広がる台地吾立てり
312 密談に聞き耳顔の金魚かな
313 初蝉やひと声ありてあと閑か
314 風鈴の短冊余る風もらふ
315 手にラムネ昔話で得意顔
316 入道の鼻穴貫き機影ゆく
317 雷鳴に友の語らい静まりぬ
318 駄菓子屋に悪餓鬼もゐて心太
319 形代の君の名湿る紅の跡
320 黙祷や思ひ思ひの蝉時雨
321 遠花火思い出のみに生くる父
322 あめんぼの踏ん張るところ空凹む
323 蜘蛛いくさ車の屋根で見張る猫
324 えのころ草ひとりは鬼となりにけり
325 鉾町の風堰き止めし人出かな
326 自己嫌悪掻き毟りつつ髪洗ふ
327 目覚めればラジオの民話牛蛙
328 湿舌のまた舐めに来る梅雨長し
329 増えてきし白髪も染めて更衣
330 下駄草履スニーカーもあり踊りの輪
331 帰り道蛍捕らえて子へ土産
332 山頭火庵りし伊予の蝉時雨
333 乱切りは妻の怒りか冷奴
334 大鼠眼を朱くして半夏生
335 銀の滴弾けて十字夏の夜
336 空港橋の行方を隠す霧襖
337 今日まではそこそこに生き蛇イチゴ
338 青柿の熟すを待てぬ余生かな
339 アイスクリンアイスクリンとぞ暮れゆける
340 何もせぬままにはや文月なり
341 さくらんぼてるてるぼうずはだかんぼ
342 梅雨篭り犬のあくびのうつりけり
343 行き摺りの顔なつかしき 夜店の灯
344 船虫が宇宙人とはまだ知れぬ
345 蚊を叩き四十九年は夢のごと
346 天瓜粉化粧のやうで嬉しき子
347 愚痴二つ三つ聞き母の髪洗ふ
348 空蝉や森の賢者の顔をして
349 蘭鋳の鉢をはみだす虚仮威し
350 若竹も空と遊べる歳となり
351 洗ひ髪耳にそよがせ嘘を聞く
352 風鈴にため息吹きかけ耳澄ます
353 夏蕨いさゝか国を憂ふなり
354 夜店の子ポケットに小銭弾ませて
355 遠雷は遠い記憶のごとく消え
356 笑むモデル添へ向日葵にズームイン
357 籐椅子や洗濯物を重ね置く
358 植ゑた田に歩幅の同じ足の跡
359 苦瓜の日毎太りて一句かな
360 甚平の碁敵が来る下駄の音
361 荷駄の音ほろびて峠青ススキ
362 活力はこの一服さ若葉風
363 昼顔や鉄輪の井戸の釣瓶巻く
364 鬼灯市木遣り聞こえる街どなり
365 夕焼けに浴衣姿の下駄の音
366 尺蠖の測りかねたる世の縮図
367 はたた神連れて父の忌近づきぬ
368 白玉の記憶のひとつ忘れます
369 紫陽花の色に完成なかりけり
370 鵬と言ふ鳥のはなしや南風
371 洛中を上ル下ルも青山椒
372 嫌ひとも好きとも言へぬ海月かな
373 夕焼やだあるまさんがこおろんだ
374 紫陽花の色塗り変える夜の雨
375 穴あきの新聞を読む夏休み
376 寝茣蓙干しゆうべの夢を風にする
377 木瓜の実の固き青さや雲の峰
378 まだ抜けぬずうずう弁や山法師
379 梅雨空を忘れてをりし上手投げ
380 満天の星憚らずキャンプの恋
381 往来も風も絶えたりきりぎりす
382 折紙を折ゆくやうに蓮の花
383 妙案の生れて来たる雲の峰
384 熱帯夜女の白い裸体舞う
385 まくなぎやおくのほそ道通せん坊
386 サーファの父と子波の天辺に
387 月光の比重ありけり蜘蛛の糸
388 温き風キンギョ草の初泳ぎ
389 号外はテポドン黒いさくらんぼ
390 米軍の果て無きフェンス雲の峰
391 青瓦青葉の波に埋もれおり
392 飛魚の飛翔の綺羅隠岐の海
393 江戸前の天ぷらは塩納涼船
394 里は今人影もなし梅雨晴れ間
395 梅雨寒の夜半に目覚めし夜具を足す
396 蟇四肢の構へや威し声
397 3. 森の中みささぎ眼り苔の花
398 菩提寺の碁仇なりし絽の法衣
399 糠漬けの茄子の美味しい旅戻り
400 虫売りの木陰にひろぐ世界地図
401 夏萩のひれ伏す如く雨叩く
402 昔童ゆるり網振る蜻蛉採り
403 放置自転車たしかめてゆく夏の蝶
404 スコールの如きに打たれし白き花
405 紫陽花や逢魔ヶ時の白拍子
406 声のばす腹式呼吸梅雨晴間
407 草笛を吹きふき帰る子どもかな
408 頂天までを捩れる不安ねじり花
409 朝虹や時々刻々を生きている
410 夏草や古りし馬蹄を祀りゐて
411 藤棚の下に乾いた土団子
412 病む姉の編みしセーター夏の色
413 全力を抜けば噴水落ちにけり
414 露天風呂夜風に香る浴衣の娘
415 携帯電話胸に納めて三尺寝
416 叱られて孫又のぞく冷蔵庫
417 奇術師にまた騙されて戻り梅雨
418 サッチモの口中赤き大暑かな
419 還暦のおとこ八人夏座敷
420 小指からほつれて中は西瓜忌だ
421 蚕豆の皮ごと食べて食談義
422 ルンペンも旅人となる伊予の夏
423 根性でスポーツした日遠花火
424 嵯峨野行き老鴬昂き声しきり
425 風鈴や異国の匂い新所帯
426 青芝や神風吹かずゲルマンの地
427 絞りても絞りてもまだ夏の雲
428 痔と酒と秤にかける大暑かな
429 初恋の娘は通せんぼ雲のみね
430 今日もまた演歌でディケア終りけり
431 きつきつと宙につばくろ梅雨明くる
432 病葉の花ほほづきの側に降る
433 尺蠖の動き始めて膝を打つ
434 六十はまだまだ若手ビール注ぐ
435 向日葵や少女が一人すねている
436 夕涼や甕をゆき交ふ跫の音
437 地球自転月見草がまた開く夜
438 緑陰に藍を沈めて池静か
439 もっぴいはのっぴきならぬおかっぴき
440 菖蒲園遠近法で眺めをり
441 春愁やうす紅を差す昼下がり
442 蛇降りて目から飛び込む響きかな
443 杖休め田に張る水を眺めけり
444 江戸入城宮本陣に鳩三羽
445 追伸に自慢もすこし花菖蒲
446 離婚など怖くないよと揚羽蝶
447 あかつきのハングル覚え海近く
448 大声の女(ひと)が先生海水着
449 紫の浜に広がる白雨かな
450 落し文交友狭く地に戻る
451 夏ばてと医者の診断そっけなし
452 驟雨きて駆けるヒールの音若し
453 老鶯の老ともいへぬ心地かな
454 春野面旅人指をもてふるる
455 春浅しレノン似の人窓際に
456 牛蛙古墳の濠の深みどり
457 夕立や立ってころがす愛称句
458 観音にも腋というもの蓮の花
459 ねじり花天まで遠きスパイラル
460 終電車忘らる西瓜網棚に
461 全身で開ける蔵の戸梅雨長し
462 梅雨晴れ間シャツ喜びの平泳ぎ
463 銭湯の富士霊山やラムネぬく
464 見つからぬように一気に飲むサイダー
465 悟り無き吾はこの蝿この一打
466 すいとんのだしは炒り子で梅雨曇
467 スカートの裾の弾ける夏休み
468 鳥のはやトマトの色を見逃さず
469 涼風やひと掴みしてふところに
470 妻の目をちょっと誘ひ 夏帽子
471 峡谷に響く爆裂大花火
472 千枚の鏡五月の千枚田
473 宿下駄に折合つて行く跣足かな
474 星祭音沙汰絶えし数ふえて
475 自づから舌出し合ふて氷店
476 五指も五感もどっと膨らむ夏蕨
477 俗世の身包み清めしブナ緑
478 雲の峰赤い絵の具が捩れてる
479 朝日背に子雀二羽が餌ねだる
480 暑き日に仏壇磨く妻の汗
481 朝採りの茄子の大小揚げて煮て
482 微笑み交わせば夏の訪れ
483 見なれたる寺門に今朝の若楓
484 うつ治療帰りし道は炎天下
485 犬ざぶりざぶりざぶりと泳ぎだす
486 水中花猫のやまひはネフローゼ
487 宵宮やリードの先の子のお面
488 七月を吹き流しをり白いシャツ
489 宿六と呼ばれて久し梅雨籠り
490 短夜やみじかき夢にわが身病む
491 向日葵や内緒話は通じない
492 ひまはりの回るといふも朝の向き
493 イタリアにも蛍が居ると便りあり
494 娘の部屋は原色ばかり五月闇
495 窓際の自分探しの天道虫
496 信号を待つ片陰に車椅子
497 浴衣着る妻の他人に見えし宵
498 夏風邪も長引くほどの悩みかな
499 乱暴な夜明けとなりて梅雨晴れ日
500 なめくじの思案の跡や光るみち
501 端整を擽りたくて青桂
502 見るほどに青梅あまた青の中
503 天を刷き 終えて地を刷く 合歓の花
504 虹立ちて空海様の寄足山(よらせざん)
505 馬霊碑の一つ置かれて鰯雲
506 梔子の花朽ち色や香も失せて
507 甚六の寝ぼけ眼よ明易し
508 雨の輪は花火広がるやうにかな
509 梅雨晴れのランドセル肩乱れをり
510 人間の穴という穴黄砂来る
511 あめんぼの水踏外す不覚かな
512 星明り夜行バスにて横たはる
513 曇天をしぼりてぬぐふ夏座敷
514 たたみじわ風が直して捕虫網
515 宵山に粽(ちまき)買いけり子等の声
516 枝折りて蜘蛛の囲払い行く山路
517 蟻の世も列をはぐれる輩(やから)ゐて
518 南瓜煮てホクホク味を隣家まで
519 晩涼や優しき言葉ほろと落つ
520 百合開く少女叫んで峠越え
521 緑陰を背に第一打しかと打つ
522 捩じ花のくりくりくりと天を刺す
523 幼な去りて笹舟もやふ小池かな
524 展望が効いて西日の分譲地
525 この療養 なあに白寿までの句読点
526 冷房の音や個室の母看取る
527 六月の雨只の雨骨溶かす
528 怠けおる我が耳底に蝉時雨
529 胸板に頭突きは空し西瓜割る
530 梅雨空へ税率アップの紫煙吐く
531 かっこうや天国近き山湖の湯
532 雨の中しのぶと言うか文字摺草
533 二人旅紫あやめ毛越寺
534 海神も目を細めたる水着かな
535 短夜のホテルの枕打ち返す
536 夏霧や山頂駅のハイヒール
537 土用のうなぎ食わせたきビルの月
538 西瓜食ぶ家族に絆ありし頃
539 寝苦しき果てに見てをる朝曇
540 鎌倉に日傘原節子かもしれぬ
541 団扇手に一番星を探してた
542 惨敗に身は遣る瀬無き朝曇
543 涼風やうなじはたまに見せるもの
544 水眼鏡掛けて埴輪の目許かな
545 あの人と揃いの浴衣青い風
546 風を得て新緑の森動き出す
547 顔なじみばかり母の地笹粽
548 麨いにむせて亡母ことをふと
549 建ち上がる虹アフリカの子ども等へ
550 白き船黒き水脈引き夏隣
551 カメラマン七月場所に飛ばされて
552 朝顔の色水未来を描きしか
553 夏登山カメラ1点に皆笑う
554 記念日のご馳走のため離婚せず
555 青田波五百マイルの旅途中
556 嘘つきてぐちゃりぐちゃりと冷奴
557 水面よりおのれ見つめる糸蜻蛉
558 七変化女一人の凛と生き
559 故郷の蝌蚪は群れなす月曜日
560 駐車場の白線に蟻並びをり
561 河童忌は吾に生なく雨に昏る
562 茄子を焼く齢重ねて円く焼く
563 夏草や顕彰碑残る母校跡
564 一輪の薔薇燃ゆるかな恋の色
565 脅されて人も毛虫も固まりぬ
566 しがらみや暑くてならぬ部屋に居て
567 かぶりつき頬まで濡れて西瓜かな
568 狛犬の歯並びきりり暴れ梅雨
569 マネキンの夏衣脱がせて着てみよか
570 雨激し雷さらに激しかり
571 長居して別の暑さを置いてゆく
572 夾竹桃最悪の日も咲いていた
573 散歩道甘藷の花四五個づつ
574 洗濯機有りて助かる梅雨晴れ間
575 2. 塋源も七夕飾り成田なり
576 紺青のアジサイおもし水鏡
577 先ず先に杖入りたる茅の輪かな
578 ヒメサユリに会うときめきの膝きびす
579 初トマト鼻の先まで染めている
580 浮世絵の蚊帳に透けたる女人かな
581 硝子戸をなぞる指先薔薇の雨
582 自ずから心のかよふ団扇風
583 迎え火や話したきこと聞きたきこと
584 パナマ帽 後姿に つい見とれ
585 手品師のハンカチ夏夜の鳩となる
586 ハアハアと天狗が登る山開き
587 雹降りし朝の畦道歩きけり
588 暮れ切って竿持つ影や夏至の海
589 層塔の闇の深さや額紫陽花
590 石蹴りはあなたにあなた花うつぎ
591 大花火渓打ち割りて谺かな
592 無花果の隠しきれない恋の傷
593 はまひるがお園児の帽子欲しけり
594 ぜいたくなお櫃のごはん八月来
595 紫陽花や「かねやす」までは歩こうよ
596 共稼ぎローン完済そして夏
597 長話いつしか片蔭消え去りぬ
598 渋柿のやんちゃ盛りの青さかな
599 4. 庵にも音透き通る風鈴か
600 雲の峰四肢踏ん張りし輓馬かな
601 星月夜包み隠さず白状す
602 簾越し月でも眺め眠りけり
603 鮎一匹釣って自慢の顔でくる
604 息合せ水面打つ尾や糸蜻蛉
605 ベンチへと片蔭残す二人かな
606 青田風 喪主の挨拶 途切れがち
607 さくらんぼ一篭づつのバスの客
608 結界の内なる孤独油虫
609 眼下には五月雨集め濃き大河
610 夕暮れや蝶に宿貸す葱の花
611 思ふことありて沈黙妻端居
612 半夏生一睡して風邪気みに
613 ときどきは甘えて欲しいアマリリス
614 夕立や鉄球をただ宥めたり
615 風鈴の音静けさ破る心地よさ
616 円い背に夕虹かかる隠れ鬼
617 手花火や各々の闇背負ひつつ
618 夜泣き児に乳房盗られし夜の秋
619 揺れている夾竹桃の青い空
620 夏の雲大河の堰を睥睨す
621 学僧の白きうなじや花菖蒲
622 ソファ―寝の梅雨雷に起こされて
623 七夕や誰か逢いたい倦怠期
624 アンタレスあれは織女よ星今宵
625 梅雨空も構わず飛機の離着陸
626 土俵掃き一途に涼気集めをり
627 かき氷売る足下に沸くエンジン
628 瀬の音に耳とらわれし短き夜
629 ほうたるや晴舞台なる休耕田
630 青嶺におーいと木霊呼び起こす
631 イロハ順組み建てられる海の家
632 夏バテの胃弱を測る土用入る
633 星月夜ゆっくり消える紫煙かな
634 体温計は寝返るや熱帯夜
635 地球より小さき宇宙金魚鉢
636 密談をきく天井の守宮かな
637 里の道はぐれ蛍の二灯り
638 隣席に香水の香の残りけり
639 江戸風鈴右脳深きに響きけり
640 青嵐テニスコートを染めながら
641 蝸牛暇を潰すに這ひ始め
642 ブンブンと紫陽花ゆする熊ん蜂
643 自我の皮脱いでみたとて桜桃忌
644 魚の眼のさびしく睨む大暑かな
645 吾妻山見ゆるたつきや水を打つ
646 液体のやうな青田の自働ドアー
647 五月雨の水もしたたる新車かな
648 草千里阿蘇の赤牛風涼し
649 飛行雲伸びゆく先は夕焼けて
650 吸盤の後足二本トカゲの子
651 新茶淹れ畦に座りりし晴れ間かな
652 湿球のガーゼ乾ける大暑かな
653 青年やルーマンを語り額に汗
654 空蝉にまだ残りたる視線かな
655 祇園会や空も混み合ひ涙雨
656 窓すべて放ち風待つ梅雨晴れ間
657 身の丈を超へる荷のあり蟻の昼
658 ためらいの唇重ねて花火かな
659 銀舎利に紺の滴る茄子かな
660 戻梅雨眠りは深し午後の椅子
661 身を削ぎて乙女の頃の浴衣かな
662 虹の橋渡れば浄土へ行けるかも
663 テーブルの下に茣蓙敷き昼寝の児
664 啄みに人を恐れぬ雀の子
665 土用波茶髪は今も淋しくて
666 売れ筋は豆腐のジヨニー冷奴
667 梅雨深し喫煙室は人だかり
668 日傘さし改札口に子を待てり
669 盆踊り記憶の箱を膨らます
670 七夕の竹高々と持ち帰る
671 花蕊に私語置いてゆく黒揚羽
672 雲の峰黙して登る歩荷びと
673 出てみよか扉開いたら蛍籠
674 百面相童女の髪に木の間風
675 炎天や釘踊りだすトタン屋根
676 瓶の中のビー玉から二重虹
677 何するもステテコ姿の歳となり
678 柔らかに語る老女の日傘かな
679 全身で緑吸い込む青田風
680 母は子を子は乳房抱き昼寝かな
681 不器用に生きて喜寿です酔芙蓉
682 かくす無駄膝小僧に青嵐
683 アーファーの雲よりいでし波に乗り
684 友増ゆる丹波の黒豆合歓の花
685 糸に結ふ言葉捜せり星の恋
686 花菖蒲かつての男の子に肥後守
687 雪渓や大石丸め峡深し
688 児の眠り母の誘うや団扇風
689 父の忌の五月雨ほそき一日かな
690 瞬! 空切るオニヤンマ
691 旅装解く日数に熟れしゆすら梅
692 白南風にジャズの音幽か宿場町
693 夏富士や空まで続く小屋灯り
694 やや派手にテニスウェアー梅雨の晴れ
695 丘の上のトマトじりじりと夏の朝
696 冷蔵庫充たして誰か待つ気分
697 一つ寝の肌に馴染みし宿浴衣
698 ローンみな支払ひ終へて夕端居
699 子が夢中我にも在った蟹追う日
700 北壁をしじみ蝶攀ず未来あり
701 青空の色の生地裁つ夏の服
702 行くところありし末期の梅雨の中
703 酒のんで心とどめぬ夏の空
704 「おさきに」とゆずる路地裏濃紫陽花
705 野仏を生き返らせし大夕立
706 放課後の芝生や汗の乾くまで
707 主婦たちの朝のアンテナ立葵
708 買われきし金魚の孤独わが孤独
709 葉を揺する遊び覚えぬ夜盗虫
710 どかとゐる瞼の裏にある門火
711 子等去りしプールを泳ぐ絵の魚
712 列島の梅雨入り知らす新幹線
713 花くちなし星出始めて仄白し
714 火の筋の風に吹かれし揚花火
715 大灘は目に溢れたれ夏の坂
716 塗椀に蓋の吸ひつく日雷
717 忘の矢を放ちて花の息も絶え
718 百貨店の花茣蓙ひととき深といき
719 梅雨寒の机の中の硯かな
720 突き当たる熊も出さうな木下闇
721 鶏一羽ぎしぎし挽きて巴里祭
722 金魚やの休んだ木陰交差点
723 片陰や左の頬に紫外線
724 延べた手の先よりこぼれる蛍かな
725 梅雨明けの庭呆然と草木立つ
726 枇杷熟るる母に貰ひし黒まなこ
727 夏牡蠣を一気六府は日本海
728 その主はどこにゐるやら蛇の衣
729 梅雨戻る多剤耐性緑膿菌
730 熊蜂を うけてもてなす 額の花
731 お遍路の忘れてゆきし季寄せかな
732 夏の陽の泰山木を透かしけり
733 梅雨出水犬も散歩を嫌いをる
734 大蚯蚓 思ひきり伸びする芝生
735 朝涼に鼻唄おれの知らぬ歌
736 虹を見る次元を一つ変えて見る
737 蛍火や彼方に発光ダイオード
738 蓮の葉に自若の眼青蛙
739 百合愛でし友よりの写真香りたち
740 かめ雲をうさぎ雲追ふ植田かな
741 緑陰のベンチに老いのへぼ将棋
742 なでしこ花ピーンとさらんらっぷかな
743 陽が昇る黄花が好きと夏の蜂
744 蟇を詠む黛まどかのゑくぼかな
745 昼顔の左巻きにてデジタル波
746 警察署長も駅長も来て山開き
747 梅雨寒や陽射しの色に心なごみ
748 大崖の翳り覆ひて月見草
749 かささぎの旅仕度解く雨夜かな
750 廃屋に並んで額の華やげる
751 明暗れの壁に届かぬ蚊のゐたる 
752 半夏生同窓名簿の物故欄
753 Rainy Day*レイカ*かんかん無礼者!
754 逃げ水を追って未来の影を追う
755 どくだみの花消え闇の納まりし
756 所在なく一日過ぎけり夏至一日
757 西瓜割り癇癪玉の破裂かな
758 ややの履くぶかぶかの靴蝌蚪に足
759 職方の御夜決め込む木下闇
760 夏座蒲団下駄職人の座り癖
761 放牧の羊の群れや夏帽子
762 女生徒のおしやべり止まぬ桜桃忌
763 田水沸く切れる子多い世となりぬ
764 少年は大志いだけず夏果てる
765 夏草や血のりは各自拭うべし
766 病葉の葉脈あらは斑惚け
767 向日葵やぽきつと鳴りし首の骨
768 前立腺肥大の焦り明け易し
769 白靴やラジオ体操の輪に入る
770 天空の鳥になりたい鴎外忌
771 手を通すことなき衣土用干し
772 渓の雨桟敷あぶりの夏料理
773 お中元玄関口に判用意
774 天晴な目覚の朝大賀蓮
775 梅雨晴れて厄神さんの祈祷受け
776 わんこ蕎麦三十杯目の汗を拭く
777 夏衣うすき胸透く夕べかな
778 ゴーグルや田草取る臀ふとかりき
779 紫陽花や雁首並べ何見てる
780 父の日の父なし子には無形なり
781 大杉のけもののごとく果てる夏
782 托鉢の小銭取出す日の盛り
783 ラマ僧の伏せたる寺に破れ傘
784 収穫が遅れ梅の実鳥の餌
785 絵扇や開けば古都の鐘の音
786 絵の町のあやめの彩の滴かな
787 微笑みの隣合せや虎が雨
788 麦笛になぜかふと湧く涙かな
789 母の擂る三時のおやつ氷水
790 南瓜の花瓶に似たる花咲けり
791 つり橋のゆれて河鹿の鳴きしきる
792 愛用の急須撫でつつ梅雨籠り
793 さくらんぼ二つ一緒が嬉しかり
794 ことしの紫陽花にことしの色合い
795 少年の自慰昇華する蝶の羽化
796 婆さめて草這い取らる夏の朝
797 珍しき古き友来て夏茜
798 花柄の紙のパンツや昼目覚
799 撫で牛のあら六月のしみ増やす
800 鬼灯に透けて見えたる地球かな
801 この狭庭 我が物顔の蟇
802 銭湯に語らいてゐる夏至の雨
803 切らぬままほうばりて瓜木陰飯
804 新幹線よぎる近江路青田波
805 よき波の来てサーファーの立ち上がる
806 松の芯雲まで届く心ざし
807 夏の朝入選祝の花届く
808 犬吠えて人語に聞こゆ炎暑かな
809 自転車に妹乗せて夏祭
810 列島や夏の球児の予選会
811 もどかしき己が背掻く古団扇
812 万緑や縄文人となる一日(ひとひ)
813 緑みどりと色深め梅雨最中
814 草取りや 覚へ乏しき かすり傷
815 大緑陰豊かな流れ生れけり
816 上の子の優柔不断花むくげ
817 夏服の賑わう声の下校かな
818 成田屋の色して朝顔見得を切り
819 園丁の苦を咲き初めし花菖蒲
820 高階に住んで初蝉下に聞く
821 硝子張りのビルに貼りつく雲の峰
822 尺蠖や尺とることが生きること
823 初物はまず鳥のもの桃熟れる
824 子等巣立ち老犬のこる夏館
825 門茶受く雨となりたる義民祭
826 けふ半丁あす半丁の冷奴
827 暫らくは憩ふ山かげ囮鮎
828 無心とは泣き晴らすこと夏椿
829 八丁味噌提げて汗拭く矢矧橋
830 遠雷にはや雨足の追いぬけり
831 サングラス悪しき噂のある女
832 水郷の木組みの橋や行々子
833 一人来て続いて一人茅の輪かな
834 十薬や同じ構への一戸建て
835 カラカラと蝉のも抜けに夢残る
836 紫陽花や美しい嘘こぼしおり
837 白蓮に鯉水しぶき朝の露
838 この家のいつもの窓辺花糸瓜
839 平和っていいな家庭の湯に浸かり
840 炎天下 樹陰に戻る 午後3時
841 振り向けば自販機の声梅雨の闇
842 人又人東京五月雨御飯粒
843 坂がかり蜂列辿るランドセル
844 梅雨長きひねもす灯る奥廊下
845 闇深し河鹿聞きつつ寝落ちけり
846 籐椅子の肘掛け光る 父譲り
847 ごろ寝の子へそ丸出しの海の家
848 ピザの生地宙で伸ばすや夏の夜
849 草屋根のほつれも吹かぬ暑さかな
850 1. 蚊に刺されろくろの足もはやいかな
851 炎帝のビル街ゴジラ暴れさう
852 鞍馬路は根瘤ばかりや霧時雨
853 心にも梅雨前線 手術明日
854 地球儀のどこを切りても梅雨匂う
855 日も落ちて歌ふ母子の蛍狩り
856 山古志の復旧遅々と梅雨に入る
857 逢ふその日ジンクスのいいハンケチで
858 人生のしだいに迅し走馬燈
859 ウオークマンの街から町へ夏来る
860 バラ一輪クレーン操る乙女かな
861 蛇と見た枝に大きな悲鳴かな
862 初生りの胡瓜の棘のあなどれず
863 前線を北へ動かしついりかな
864 神誘ひ神となりたり踊りの輪
865 合歓の花峠の茶屋の昼下がり
866 鍛冶音の路地に熟れたるトマトかな
867 遣る瀬なき七里ケ浜やヨットの帆
868 水彩のむらさき薄き花菖蒲
869 玉の汗流るるままの砂遊び
870 青き風ふうりんばかり捉えをり
871 顔浮かぶ名は遠のきて端居かな
872 涙痕残してでで虫2,3寸
873 西瓜タネ口から吹きて蠅狙う
874 パステルの心梳かしゆく夏の夕
875 夏雲や動かぬものに手水鉢
876 梅雨のうつカラフル傘で紛れけり
877 核変化我もたちまち女滝かな
878 昏れのこる渓川の水河鹿鳴く
879 丁寧に角まで植ゑし田んぼかな
880 砂浜に寝返りを打つ水着かな
881 虹の橋児等歓声で貫けり
882 サングラスかけて言うのは卑怯やで
883 苔の花活断層はこのあたり
884 峡の底ありとは見えぬ鮎の宿
885 青田風乗客ぜろの列車ゆく 
886 曼珠沙華野に百茎を噴きこぼす
887 でで虫や畳につけし弓の的
888 日の下は者といふ字の暑さかな
889 玉葱や 地下よりもたぐ 白い肌
890 星の屑舞い降りてくれ七夕に
891 羽広げほたるのひかり飛びにけり
892 夏草やまだまだ低き子牛の背
893 浴衣着て素顔の巫女の国ことば
894 妻笑顔準備万端夏座敷
895 はまなすはアイヌの魔除棘淡し
896 艱難に遠く涼しき余生かな
897 初めての的は母さん水鉄砲
898 叩かれし若きバナナの痛みかな
899 万緑や幽かに傾ぐ水の星
900 ぐれし子も二児の父親ねじれ花
901 蜻蛉に追われて泣く子ひとりっ子
902 白百合の首に矩尺入る如く
903 片陰がコースを変えるウォーキング
904 夏野ゆく二筋に伸びし轍かな
905 潮騒に混じる風鈴夢うつつ
906 蒼き宙君が瞬きアルタイル
907 子の去りて言葉少なし夏椿
908 四羽六羽つばめ舞いたる上の池
909 夏に入り腑を冷したる熱を出し
910 瀬戸の風からだいっぱい海にする
911 旅の荷を膝に枕の三尺寝
912 励ましは言葉にあらじ夏料理
913 梅雨空や傘差しかけて又一歩
914 干梅に濃き影添はす土用かな
915 大股に構へて僧の氷菓かな
916 なめくじらあとかたもなく消えにけり
917 梅雨晴れ間下校児覗く水鏡
918 鉄路果つここより北の夏の海
919 向日葵は向日葵のらしく顔ならぶ
920 ありがとう先に逝くよと蓮の花
921 蓮の葉のざわめいており何かくる
922 六月や白いホテルと白い船
923 風薫る子供歌舞伎の立稽古
924 兼六園四万坪の緑かな
925 貌よせてゆらり金魚に見つめられ
926 猛禽の眼窩を深め稲光
927 曲芸の萼に乗りし蝸牛
928 空気閉じ凪の中ある西瓜とは
929 見上げれば人が見下ろす滝の上
930 梅雨湿りおちこちで聞く認知症
931 遺伝子を組み替へ来世は蝶に生れ
932 鍛冶埃払ひて潜る茅の輪かな
933 夕空に帰る蜻蛉と父と子と
934 ビーチバレー掛け声は若い脚
935 頭巾替え地蔵も盆を迎える日
936 梅雨出水傘が重なる歩道橋
937 大西瓜ジュニアシートに縛りあり
938 コンビニに下駄の賑わふ夏祭り
939 夕立に今日も借り傘家に増え
940 石の貌小暑の雨に蒼味増す
941 目盛りにジーコジャパンや悔し去る
942 夏帽子押さへて渡るかつら橋
943 父の日の追伸一行にある本音
944 母さんかな香水強き参観日
945 騒ぐ子に囲まれ跳ねてみずすまし
946 紅薔薇や美しく人傷つけて
947 フルートの別れの調べ夏灯し
948 病葉のいつか吹かるる軽さかな
949 歌声に合はすハミング水芭蕉
950 母の日や遠くで歌う「北国の春」
951 ランドセル頭上に帰る炎天下
952 錆び深き鉄風鈴の音さやか
953 このミスはワープロのミス雪月花
954 褒められし一年ものの蝮酒
955 二次元に高さ乗じし滝しぶく
956 日焼けの子日は金色に海暮るる
957 物干しの寝巻揺らげる日の盛り
958 大西日嫁の埃は目立ちたる
959 改札を走り出る子や夏休み
960 秋涼や値踏み楽しき古掛字
961 夏帽子にっこり取り上ぐホールインワン
962 下枝を払って夏を通しけり
963 大撫の涼しき鼓動に耳つけて