カルチャー教室

研修通信俳句会

平成30年度(第25期)会員募集

全国の熱心な会員の作品交流の場として好評の「研修通信俳句会」は、2018年9月から第25期に入ります。ここで、改めて下記の通り会員を募集致します。
◎俳句会 通信(郵便)で隔月、年6回
 ・投句 毎回5
 ・選句 毎回10句相互選
 ・講師 松下 カロ 山本 敏倖(五十音順)
 ・会報 毎回講師選評と互選結果掲載。
協会員のみ 定員100名程度(三組に編成)
◎期間 平成30年9月から一年間
◎会費 一期7,200円
◎行事 講師・会員が一堂に会する「特別研修会」年一回。
◎申込 葉書に「通信俳句会」と住所・電話・氏名(ふりがな)・年齢・性別・結社明記。
 ・締切 平成30年7月31日
 ・宛先 現代俳句協会 研修部宛
 ・入会通知は9月上旬に手続き案内と共に入会者に送付。
※添削指導はありません。互選による通信形式の句会となります。

スタッフ:宮崎斗士、長谷川はるか、茂木和子、小髙沙羅、栗原かつ代、鈴木砂紅、久下晴美、利光知惠子、植田いく子、芹沢愛子、磯部薫子
 

研修通信俳句会  「第二十四期・第五回」

Aグループ高点句
 

 重心をずらし五月のランドセル   大沼惠美子

 

 ソーダ水言ってしまいたい嘘がある 吉田典子

 

 緑陰を出て我が影を取り戻す    岩成天風

 

Bグループ高点句
 

 来し方はもう陽炎になっている   宮澤雅子

 

 石けって淋しさ蹴って夕焼の子   石井紀美子

 

 花大根新任教師の語尾上がり    東 國人

 

Cグループ高点句
 

 正直をかたちにすれば冷奴     山口富雄

 

 鍵盤のところどころに梅雨の音   山本則男

 

 春の雲蹴り上げてゐる逆上り    沼尻世江子

 

 

岩淵 喜代子 講師特選句
Aグループ
  初蝶はひかりのひとつ宙深し   畑 佳与
(ひかりのひとつ)と言っているのだから、ひかりになるものは他にもあるのだろう。それらを想像させながら下五の(宙深し)に行き着くとき、一枚の絵画、それも抽象的な絵画になっている。
  リハビリにつかむ手摺や五月来る 岩成天風
リハビリに励む日々にも季節は訪れる。歩行訓練などのためにある手摺、それを掴む手触りにも季節は感じられるのである。作者は、手摺に五月を確かめ、回復の兆しを確かめているのである。
  白日傘時折り空を仰ぎけり    石井ひさ子
傘の中にいると、すれ違う人の顔も見えなくて、吾一人の世界になる。雨でもないのに差す日傘は、さらに鬱陶しさも加わってくる。そのため、無意識に傘を傾けて空を仰いでみたりする。空を仰いだからと言って、何かを期待しているわけでもない。日常の一所作を文字に置き替えたとき、白日傘の詩になった。

Bグループ
  かたかごの花はコタンの森の声  田口美喜江
(かたかご)とは片栗の古名、それを、コタンの森の声だと言い切っているのが、作者の独創性である。先住民族であるアイヌの集落の気配をかたかごの花に重ねているのが、読み手にも諾える。
  新緑やペンキの匂ふ舟着場    渡部 健
何処を向いても若葉のまぶしい季節は、希望の象徴でもある。(新緑や)という一語が広げる世界は無限である。その一隅の(ペンキの匂ふ船着き場)は、まさに無限の世界の出発点のようだ。
  托鉢にふりむきもせず葱坊主   あざみ 精
托鉢とは修行僧が家々をめぐりながら、布施を求めてゆく姿である。なかなか施しも得られない托鉢僧に心を寄せている作者がここにはいる。葱坊主の置かれ方が巧妙である。
 
Cグループ
  市営バス待つ四五人の登山靴   平原君枝
これから山に登ろうとしている四五人の登山靴の人を見かけたのだろう。作者はどこよりも足下を固めている登山靴に、注目したのである。読者もまた作者の目を通して、登山靴に心を寄せることになる。
  子猫来てなんじやもんじやの花盛り  中村 穂
(なんじやもんじや)は大方はヒトツバタゴを指す。細かな白い花が樹木を覆って、遠目に雪を被ったようになる。一句はまるで子猫がなんじゃもんじゃを咲かせたようにも錯覚させる叙述で、早春の詩情をあふれる絵画となっている。
  一匹となりし目高のよく動く   梅井玲子
初めはたくさんの目高だったのだろう。それがいつの間にか一匹になってしまった。一匹になっても水槽の大きさは変わらない。(よく動く)と活動的に描きながら寂しい内容だ。
 
 
川辺 幸一 講師特選句
Aグループ
  若葉風手のひら全部で会話する  吉田典子
手話ではあるまい。身振り手振りを交えての会話である。口に出す言葉では足りないのである。匂い立つような鮮やかな緑の中での風と光が見えてくる。中七の措辞がいい。寒さから開放された弾んだ声が聞こえる。
  わらわらと脱ぎ端正な今年竹   中村かつら
散り乱れるさまを「わらわら」というが、「笑々」の文字を当てたらどうなるだろうかと思った。哄笑のなかで皮を脱ぎ、筍から竹に成長し、青々と丈を伸ばした。その姿を「端正」と感得したところが見事である。
  青嵐丸薬一粒迷走す       白岩絹子
薬を服用するときにままあることである。一大事を述べて、笑い飛ばしているような爽快な印象がある。それは明るいイメージの季語「青嵐」を配したためであろう。俳味のある作品にうまく仕立てている。
 
Bグループ
  医学部の煉瓦の校舎若葉風    飛田伸夫
最近の大学校舎はお洒落なデザインと高層ビルディングに建て替えられたりして厳かな雰囲気がない。煉瓦の校舎を見てほっとする作者が見える。命を預かる医学に威厳と信頼を求めるのである。煉瓦の古い校舎に郷愁とあこがれをもったのかも知れない。
  八十八夜締め切りはすぐに来る  勝又千惠子
作品の締め切りを言うのであろう。締め切りはのんびりと気を許していると直ぐに来てしまう。急がないと夏が来てしまうというのである。下五の口語表現が軽やかでよい。
  八十八夜ひろびろと母の家        宮澤雅子
ご実家にはご母堂がひとりで家を守っているのだろう。ここで暮らしているときには感じなかった家の広さに感じ入るのである。時の移ろいのなかで感慨にふける作者の戸惑いが伝わる。
 
Cグループ
  外つ国の人と地酒の鮎の宿    髙原信子
近年「サケ」を好む外国人が増えて人気がある。箸を使いこなす人も増えた。古めかしい「外つ国の人」と夏の風物である「鮎の宿」の取り合わせが意外だ。もうすぐ「外」も「内」もなくなる時代になるかも知れない。
  兜太亡くきょうは憲法記念の日  小泉 信
護憲を訴え反戦と平和を希求した金子兜太への哀悼句である。憲法記念の日に改めて兜太の生涯と俳句を思うのである。俳句ではなく人生に焦点をあてた作りがすばらしい。
  古書店の主の背中春深し     沼尻世江子
黴の匂いのする古書店の店主は奥に座って寡黙である。それでいて親切に話を聞いてくれた経験がある。書物に精通した自負心を感じたものだ。その背中を見て作者は何を感じたのであろうか。この店と主の行く末か。何気ない描写にみえるが、深読みしたくなる句である。
 
(長谷川はるか報)