現代俳句コラム

現代俳句コラム

薄氷の裏を舐めては金魚沈む西東三鬼
 金魚鉢の水面がうっすらと凍っている。その薄氷に閉じこめられたように金魚が居り、その薄氷の下を彼はゆっくり浮き沈みしている。「薄氷の裏を舐める」という意表をついた、そしてユーモラスなフレーズがいかにも三鬼らしくておもしろい。朝日新聞のコラム『素粒子』氏が、二月六日の夕刊で「春は名のみの寒気続く。薄氷の裏を舐めては金魚沈む――三鬼」として、記事にしている。事実、金魚は一応冷凍処理をして保存し、しばらくして冷凍を解くと、彼は、眠りから覚めたように、ひらひらと泳ぎ回るという。
 
評者: 鈴木石夫
平成18年2月9日