現代俳句コラム

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見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く日野草城

 切ない一句である。草城最晩年の作。彼は晩年、緑内障のため隻眼を失明している。しかし使用する眼鏡のレンズは左右両方ついている。で、眼鏡を拭う場合、ほんとうは見える方のレンズだけで間に合う理屈だが、やはり両方拭かずにはいられない。それが「見えぬ眼の方の玉も‥‥」ということである。
 ここでとくに印象的なのは、「眼鏡の玉」というフレーズ。眼鏡のレンズは勿論球体ではないが、ここではそれを「玉」と呼んで、いとおしんでいるのである。

 
評者: 鈴木石夫
平成17年10月31日