現代俳句コラム

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死して師は家を出てゆくもぬけの春三橋敏雄
 三橋敏雄の師は西東三鬼である。その三鬼は、昭和37年4月1日、万愚節の日に、61歳で他界した。師の生前、作者はときどきその家を訪ねたが、師はいつも家を出ていて不在だった。そのこともあって、「死して師は家を出てゆく」が発想されたのであろう。生きて家を出てゆくのは、自分の意志で出るのだが、死して家を出てゆくのは、出されるのであって、もう二度と戻ることはない。師の死によって、師の家だけでなく、日本中の春がもぬけの殻になった、という、ややおどけたような云い方の中に、師を失った弟子・三橋敏雄の、深いかなしみを読みとることができる。
 
評者: 山崎 聰
平成17年4月4日