現代俳句コラム

現代俳句コラム

波倒れたる音一つ夏蓬宇佐美魚目
 夏の蓬の茎は木質化していて一メートル以上も伸びて、ときには視界を遮ることもある。太平洋の波は内海と異なり、大きく盛り上がり、いっぱいに伸びきって、前のめりに倒れこむように浜辺に寄せてくる。作者はこのかたちを十分に承知をしている筈だ。視界の中に波はなくても音から察して、その姿を描き出している。それは夏蓬の中に波が思いきり飛び込んでいる姿である。波の音を耳にしながら、描き出して楽しんでいる。表現には視覚、聴覚の働きが大切であることは言うまでもなく、それで捉え得たものを構成していく、その感性もまた重要になってくる。
 
評者: 森下草城子
平成15年11月27日