現代俳句コラム

現代俳句コラム

吉良常と名づけし鶏は孤独らし穴井 太
 生きものと同じ目の高さにおいて感情を共有出来ることはよいことだ、と思っている。このことは簡単そうであるが、相通じるということになると容易ではなかろう。通い合っていると思っていたことが、突然無視されることがある。こんな繰り返しの中で徐々にではあるが、手応えを感じるものになる。この吉良常の名前、尾崎士郎作の『人生劇場』の登場人物から得たもの、穴井の中では鶏と吉良常は複合の映像であり、紛れもなく孤独な姿である。この吉良常と名付けられた鶏は穴井に近づき、「親分の孤独でござんすね」と問いかけるような眼差し、温かいものがある。
 
評者: 森下草城子
平成15年10月30日