現代俳句コラム

現代俳句コラム

金風の心(しん)の柱や御本山大淀三千風
 日本行脚の旅に出た大淀三千風は、一六八四(貞享元)年六月二十一日、豊前小倉に上陸し、豊後、肥後と引杖の旅を続ける。
 長崎における僧侶たちの三千風評は面白い。「情愛は兼好に勝る」とか「歌は赤人に隣す」などと言われ、西行に並べられ更に斬新な筆跡については「弘法に似る」などと煽てられている。三千風も決して悪い気はしなかったであろうし、得意満面の顔が見えるようである。むしろ滑稽ですらある。
 その三千風が、豊前・宇佐神宮に詣でるのは七月十二日のことである。
 宇佐神宮は全国八幡宮の総本宮であり、伊勢神宮に次ぐ第二の宗廟として奈良時代より皇室の崇敬が篤く、本殿は国宝に指定されてもいて名高い。二〇十五年十月には、十年に一度勅使をお迎えする勅使祭が行われる。
 掲句の「御本山」は、神代に比売大神が御降臨遊ばされたと言われる馬城の峰(大元山・御許山)であり、宇佐神宮の奥の院である。
 奥の院で一夜を明かして下山し下宮に詣でる。その佇まいは「凡ソ日本第二の殊勝地である」とし、川の流れや虫の鳴き声、森を吹き渡る風の音に至るまで「身の毛が弥立つ」ほどの神々しさであるとその賛辞はとどまるところを知らない。
 こんなことを言えることこそが「他人に阿諛する」ことを厭わない三千風の世渡り上手な術の一端であったのかも知れない。しかしその裏返しのように、驕り昂ったような振る舞いもあったらしい。
評者: 瀧 春樹
平成25年1月21日